記憶
思い出した
小学生のとき
弟と近くの沼へ行って
アカベラ(アカハライモリ)大量にとってきた
発泡スチロールのケースにてんこもり
とってもとっても尽きなく
その沼のアカベラをとり尽くすまで
日が暮れるまで
ぎゅうぎゅうに ぽんぽんに
それはもう息も出来ないくらい 満タンに
薄暗くなってきたのでそれを二人で大事に抱え
家路を急ぎ
「あんたらどこ行っとたの ご飯やよ」
という母親のなつかしい声と
くたくたなのと腹ペコなのとで
蓋を乗せたままの発泡スチロールの箱を玄関に置いて
靴を脱ぎ捨て
転がり込むように食卓へ
母の手料理をたらふく食べて
あったかいお風呂に入り
眠いので泣きながら宿題をやり
やっとのことで布団に入れる
と歯磨きをしていた そのとき
玄関から布を引き裂く女の悲鳴が
慌てて飛んでいく父
後を追うわたし
そこには
一面アカベラの派手なお花畑(のように見えた 色はグロいが)
ぎゅうぎゅうでぱんぱんでしんどかったんやろう
みんなで力を合わせて押し上げたんだろう
発泡スチロールの蓋を押し上げて
みんなで大脱出
あのとき 母を見て 人間はほんとに驚くと腰を抜かすんやな
と知りました