5時57分
仕事から帰るとき
西の空がまだ蒼いです 近頃
橋のたもとに佇んで川面を見ている人がいました
その人は白い息を吐いてポケットに手をつっこんでいました
橋の上では買い物袋を下げて下を見ながらゆっくり歩いて帰るおばあさんにすれちがいました
郵便局のポストに手紙を投函する自転車のおじさん
家の前の氷を割るおじいさん
部活帰りの中学生
小学校のプールのブロックが切れたところから見える空は
これからやってくる季節の予感と
過ぎていった帰ってこない時間を
一瞬にして凝縮させた、なにか春にふくほこり臭い風のような
古いアルバムを開いたときのかび臭いようなにおいを
わたしの鼻の前に置いていきます