ヒヨドリ
夕方
山の道から里へ向かう途中
カーブの路肩のところでなにか黒いものがうずくまっています
通り過ぎる瞬間ミラーに写ったのは
小鳥??
車を止めてルームミラーでもう一度確認してみようとしたけど
もう薄暗くなってきていてなんだかよくわからない
しかし生き物であることはなんとなく「氣」でわかる
車を寄せて降りてみた
黒いまるいものが動いている
ぴーよぴーよ
あー雛や
近寄っていくと口ばしを開けてぴーよぴよと鳴く
巣から落ちたんか
弱ったな
おまえ巣から落ちたんかー
と話しながら近寄るとやっぱりぴよぴよと口を開ける
羽根をばたばたさせる
このままでは轢かれてしまうのですくって非難させようとすると
羽根をばたばたさせて動く
しかしぴよぴよと口を大きく開けて餌くれー!の格好をする
よわったなー
このままでは轢かれる
避難させても蛇か他の動物に捕られてしまうだろうし
連れ帰る???
いやー無理やろう
すでにうち鳥二羽おるし
さーよわったな
とりあえずここから移動させんと
と捕まえて歩き出そうとした瞬間
ひゆん
ぴーぴー
お母さんです
いたんですね、近くに
ヒヨドリのようです
こどもが巣から落っこちてしまって
連れ帰ることもできないし
どうしようもなくて
そばを飛んでいたのでした
お母さんの声がしたら雛はそっちのほうを向いてぴーよぴよと羽根をばたばたさせながら
声のするほうへと飛んで(?)行きます
正直
ほっとしました
自然のなかでのこういったことは
きっと数知れずおきていて
それをひとつひとつ拾い上げていてはきりがないわけで
そうやって巣から落ちた小鳥が
蛇や狐やもっと大きい鳥の餌になるわけで
そんなことを頭でわかっていても
それでもひとり置いて帰るには心苦しくて
しかしつれて帰るにはそれだけの責任がついてくるわけで
母親がいてほっとしました
けど
母親がいてもいなくても
巣にはもどれないあの雛は
いずれなにか他の動物の餌になってしまうんだな
わたしが近寄ったときだって
母親は攻撃しかけてくるわけではないけれど
わが子を案じ
そばまでやってきて
しかしなにもできない
何十倍も大きな姿の人間に太刀打ちできる術もなく
ただ近くで母親は鳴いていた
わが子をどうもできないこの状況を
同じ母親として
母鳥の気持ちが流れこんでくる
しかしそれもまた
どうにもできない野生動物の住む世界と
人間の住む世界
人間のできることなんて
なんにもないのです
最初から
その母親と雛を不安にさせてしまったことを謝り
そこを離れました
あの親子が無事でありますように