ストーカー女、ミザリー

女神ちゃん

2014年05月16日 00:05

自他共に認める熱狂的アズミファンであるわたしは、今朝夢を見た
横浜、名古屋、大阪
じわじわと範囲を広げライブ観戦
行く先々のライブ会場でアズミさんに
「この人は看護婦さんでな、畑で野菜つくっとるんや」
とそこの人たちに紹介してくれる
そしてみんなとおいしい酒を飲む
それがうれしくてまた唄を聴きに行く

演者がいて箱があってお客さんが居て、ライブはその場限り、
同じものは二度とない一度しかみれない夢のようなもの
続く余韻
よいライブを見た人なら誰でも経験する余韻

アズミさんはいつもその余韻を長く残してくれる
そんなアズミさんのライブに通う人はもちろんわたしだけでなく全国に存在するわけで
彼女もそんなひとりなのだな、と気づいたのはたぶん数回会場で見かけてからだった
いつも知らないうちにやってきて、端っこの暗がりのようなところにひっそりと座り、
ライブが終わったら知らないうちに居なくなる
そんな目立たない女性だった

ある日何気にアズミさんに聞いてみた
「あの人も最近よく来てるね、わたしたぶんかなりの確立で一緒になっとる」
「どの人?」
「あの人」
いない
「あーさっきまでそこの端の席に座ってたおかっぱ頭の人」
「おった?そんな人」
てな調子でアズミさんはなかなか彼女の存在に気づかなかった

何回かライブの会場で一緒になるうちになんとなく目があって軽く会釈してみたりしたのだけど、
なんかすうっとよそをむいていなくなる
アズミさんの熱狂的ファンなんだろうか
もしかしてわたし快く思われてないのだろうか
ていうか嫌われてるのか?
そんな気もしてきた

あーなんかややな
はぁ
と気が重くなったりもしたけど気にしないことにするようにした
会場での彼女の視線も無視するようになった

そんなある日の仕事帰り、
いつもの近所のスーパーでレジに並んでいるときふと見たことのある姿が目に止まった
彼女だった
おかっぱ頭の

え?
一瞬目を疑ったが
次の瞬間スーパーのカゴを下げた彼女と目が合った
逸らしたのはわたしの方だった

間違いない、あの人だ
心臓がドクンと跳ね上がった

なんで?なんでここにおるの??
レジのカゴの卵やパックの鶏肉がピ、ピ、と隣のカゴに移されてゆく

「1523円です、カードはお持ちですか?」
「はい?」
「カードは」
「あ、はい」

腕から背中から首から
すべての毛穴から冷たいものがぞわーと上に上がる
心臓が内側から激しく骨を叩いて胸痛がする

恐る恐るあたりを見渡してみるがもう彼女の姿はどこにもなかった

気のせいやったのか・・・?

膝に力も入らず、買い物袋を引きずるようにして家に帰ったわたしは
その話を誰にもできずその日は背を丸めるようにして眠った

それから数日、もうそのことを忘れかけていたわたしはいつものように一人で外回りの仕事にでかけた
会社の車では音楽も聴けないので鼻歌を唄う
天気もよいので鼻歌ははずむ
信号で止まった
いい天気だ
空が青い
ふとバックミラーで後方車を確認した
ルームミラーに映った後方車のハンドルを握っていたのはあの女性だった

うそや
なんで・・・!

心臓が痛い
なんで?

信号が青に変わった瞬間、
ルームミラーに映った彼女とまたしても目が合った

それからどうやって仕事してどうやって帰ったのか覚えがない
ただ後ろの車を確認するのは怖かった

その日、アズミさんに相談した
スーパーで会ったこと、仕事中に車で後ろにいたこと

信じてもらえなかった
あたりまえだろう
だってその人は関東や大阪のライブ会場で一緒になることはあっても、
このわたしのすむ地元の人ではないから
たぶん

アズミさんはだいたいそんな人は会場で見かけたことがない、という
わたしにしか見えない人なんじゃないか、などと言う
そんなことはない
お店の人にちゃんとチャージを払っているのを見かけたし、
コップの水を飲んでいるのも見た
実在する人物なのだ

だとしたら
なぜこんなところまでやってきているのか
理由がわからない
あるとすれば・・・




つづく・・・


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