秋の夜は
さむい
十月入ったからか
夕飯を食べる前はいつもたいてい空腹すぎて最初はもう夢中で食べる
で、あるていど満たされてくると口にご飯運びながらいろんなことをぼやーと考える
中学生のときに隠れてサボった更衣室の明るさとか
吹奏楽部の先輩のサックスを持つ指の白さに見とれていたころとか
自転車で駅まで通った高校生活
体育祭になんであんなにみんな熱を上げてるのかがどうしてもわからなくて、苦痛でしかなかったこととか
後輩の男の子に一目惚れしてしまったこととか
駅のホームの向こう側で手を振ってくれたこととか
就職と入学がいっぺんに決まったとき布団を車に載せて引っ越したあの寒かった雨の日とか
名古屋で住んでいたアパートの屋上からみた夕焼けとか
彼氏とけんかしてひとり帰った路地とか
公衆電話の前に座り込んで長電話した夜とか
東京で働いていたときに自転車で通勤した桜並木とか
夜雪が積もって雪国育ちなのにはしゃいでしまった朝の駐車場とか
アパートの近所の花屋さんにいつも内緒でおまけしてもらったこととか
シマリスをオーバーオールの胸ポッケに入れて散歩した公園とか
秋川の山奥の川で泳いだこととか
氷の彫刻とか
自画像とか
九十九里の浜辺とか
どうしてこんなに記憶が次から次へと溢れてくるんかな
止まらん
同時にこうしてる今も帰れない記憶が膨大に膨らんでゆく中で
その人しか知りえないものたくさん抱え込んでみんな死んでゆくのだなぁと
妙にひとりぼっちに包まれる
秋の夜