バトル 7 最終話
それから何日かして
眉毛が脇田さんそっくりの白髪まじりの男性が
家族を連れてやってきました
その中には長身で黒い目が印象的な
脇田さんにそっくりの若い男性がいました
医師からの入浴許可はおりなかったため
ベッド上での手足浴をしました
もちろんそのそっくりのお孫さんも一緒に
「脇田さん、あっついお湯足しますよ」
目を閉じてる脇田さん
いつも難しい顔してる脇田さん
目の端がかすかに笑ってる
湯船に入ってるみたいに
「じいちゃん、気持ちいいか」
「ん 」
わたしの症例発表は
結果さんざんでした
ぜんぜんまとまりませんでした
まとめる気もありませんでした
無理でした
脇田さん、めちゃくちゃけんかしたけど
脇田さんのこと最初きらいやったけど
脇田さんのバカアホまぬけ好きやったな
ベッドの横でかくれて食べたせんべいやら団子もうまかったな
うなぎもうまかったな
脇田さん、お孫さん建築士になるんだって言ってたよ
脇田さんに似てなかなかの男前だったよ
脇田さん いろんなこと教えてくれてありがとう
「お前みたいな素直じゃない女は知らん!ほんとに看護婦か」
と言われたけど
お互いさまやで
素直じゃない脇田さん
最期はつっかえがとれたようにすっきりした、ほんとに眠るような顔で
勝手だけどわたしにはそう見えんだな
そしてわたしですが
やっぱりまだ看護婦やってます
あの日あの時
あれでよかったのかな
なんて
思うこともよくありますが
看護婦やってます
疑問だらけですが看護婦やってます