そしてハレの日

それはそれは寒い日のことでした
なれない制服に身をつつみ
まっさらの靴を履き
大きなかばんを背負うひとりの娘がおりました

娘は仲良しの友達と同じクラスになれたらいいな
と、どきどきしながら初めての学校へ向かうのでした


それはそれは寒い日のことでした
なれないスーツに身をつつみ
なれないヒールを履き
転ばないようふんばって歩く母がおりました

母は不安と期待の入り混じった娘の背中を
緊張感漂うセーラー服の白襟を
頼もしく後ろから眺めていました


吹雪はやんで
体育館の二階の窓は
青い空と白い雲を切り取っています


仲のよかった友達とは離ればなれ
ほとんどが初対面の初顔合わせ
たくさんの教科書をかばんに詰め込み
ぎこちない中学生活がはじまります

校舎の水槽におおきな鯉が泳いでいるのを
じっとみている娘
なにを思うその姿

それを見て
産み落とされた瞬間から
すでにひとりの人として
歩き始めていたのか

と今さらながら
はっとする母



寒さのあまり
母子は写真を撮ることも忘れ
足早に
母のひざ掛けを肩に掛けたら
払うことなく
「ありがとう」
と娘
足早に
少し影の伸びた歩道を
寒い寒いと言いながら
ふたり肩をすくめうつむいて
それでも笑いながら
足早に家路についたのでした



そしてハレの日





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Posted by 女神ちゃん at ◆2012年04月07日21:56スキマ
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