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おばあさんはお嫁にいきました
ちょっと久しぶりに仕事のこと書こうと思います ちょっとだけ
辺境の地で地域医療に携わっていると、ほんとにいろんな家の事情に遭遇します
(別に辺境の地でなくても遭遇しますけど)
昨日まで生きてた人に今日は冷たくなって再会します
さっきまでおじいさんに「おいしい」と言っていたおばあさん
寝たきりで、おじいさんにご飯食べさせてもらって最後におじいさんに残した言葉
おじいさん、一人になってしまいました
最後の旅立ちの正装のお手伝いさせてもらいながら、
おじいさんも一緒に体拭き
おじいさん、おばあさんの顔を拭きながら「よく面倒見てくれた。ようやってくれた」と涙
10年以上寝たきりのおばあさんの介護をたったひとりでしてきた90を越えたおじいさん
年上女房だったおばあさんはおじいさんとこにお嫁に来て、
おじいさんのずっとしたの弟や妹たちも自分の子のように面倒見てくれた、とよく話してくれた
「(そのおばあさんが)ものも言わんようになった。ただだまって寝とる。もう疲れた。もう終わりにしたい」
といつも口癖のように言っていたおじいさん
ヘルパーさんや訪問看護が入る以外の沈黙の時間、
長い長い夜、時間がおじいさんの心をちくちく刺していたのかもしれません
そのおじいさんが最後におばあさんに「よく面倒見てくれた」と泣きながらお礼を言っていました
遠くの親戚より近くの他人、と言いますが
夫婦、家族のことはそのひとたちにしか、そのひとにしかわかりません
ただ黙って手を合わせるのみです
おばあさん、きれいな顔してお嫁にいくようなきれいな顔していきました
辺境の地で地域医療に携わっていると、ほんとにいろんな家の事情に遭遇します
(別に辺境の地でなくても遭遇しますけど)
昨日まで生きてた人に今日は冷たくなって再会します
さっきまでおじいさんに「おいしい」と言っていたおばあさん
寝たきりで、おじいさんにご飯食べさせてもらって最後におじいさんに残した言葉
おじいさん、一人になってしまいました
最後の旅立ちの正装のお手伝いさせてもらいながら、
おじいさんも一緒に体拭き
おじいさん、おばあさんの顔を拭きながら「よく面倒見てくれた。ようやってくれた」と涙
10年以上寝たきりのおばあさんの介護をたったひとりでしてきた90を越えたおじいさん
年上女房だったおばあさんはおじいさんとこにお嫁に来て、
おじいさんのずっとしたの弟や妹たちも自分の子のように面倒見てくれた、とよく話してくれた
「(そのおばあさんが)ものも言わんようになった。ただだまって寝とる。もう疲れた。もう終わりにしたい」
といつも口癖のように言っていたおじいさん
ヘルパーさんや訪問看護が入る以外の沈黙の時間、
長い長い夜、時間がおじいさんの心をちくちく刺していたのかもしれません
そのおじいさんが最後におばあさんに「よく面倒見てくれた」と泣きながらお礼を言っていました
遠くの親戚より近くの他人、と言いますが
夫婦、家族のことはそのひとたちにしか、そのひとにしかわかりません
ただ黙って手を合わせるのみです
おばあさん、きれいな顔してお嫁にいくようなきれいな顔していきました
Posted by 女神ちゃん at
◆2015年06月18日21:21
│看護婦シリーズ
喉のつっかえ
高齢のお母さんを亡くされた息子さんのケースを
振り返り
みんなで話をした
ケース内容については詳しく書けないけど
どうにもわたしは
もやもやしてしかたない
もやもやイライラ
わたしは直接関わっていないからよくはわからないけれど
なんかもやもやしてくる
みんな自分のやってきた仕事が大変だから
だったから
それを認めてもらいたい
慰めあうことでほっとしてる
どうもそんなふうに見えてきて
それだったらどこかの居酒屋でお酒飲みながら慰めあえばいいじゃないか
いまここでカンファレンスと名うってやってることは
遺族の感情をおかずにして
マスターベーションしてるだけじゃないのか
医療に関わるもの同士として
互いをねぎらい
次へ進むステップとして
もしかしてそれは必要なことなのかもしれない
けど
今か?
自分はどうもみんなと視点が違うということに気がついた
もしかしたらそれは医療従事者の視点ではないのかもしれない
どころか
医療従事者としてはいらない視点、致命的な感情なのかもしれない
けれどわたしは看護婦をやっている
どうにもこうにもすっきりしない感情が一部を支配したままだったので
ここにぶちまけさせてもらった
自分は思ってることの10分の1も吐き出せていない
もやもやした思いのまま布団に入る
もうかれこれ10年くらい
ゆっくりリハビリしながら生きている
振り返り
みんなで話をした
ケース内容については詳しく書けないけど
どうにもわたしは
もやもやしてしかたない
もやもやイライラ
わたしは直接関わっていないからよくはわからないけれど
なんかもやもやしてくる
みんな自分のやってきた仕事が大変だから
だったから
それを認めてもらいたい
慰めあうことでほっとしてる
どうもそんなふうに見えてきて
それだったらどこかの居酒屋でお酒飲みながら慰めあえばいいじゃないか
いまここでカンファレンスと名うってやってることは
遺族の感情をおかずにして
マスターベーションしてるだけじゃないのか
医療に関わるもの同士として
互いをねぎらい
次へ進むステップとして
もしかしてそれは必要なことなのかもしれない
けど
今か?
自分はどうもみんなと視点が違うということに気がついた
もしかしたらそれは医療従事者の視点ではないのかもしれない
どころか
医療従事者としてはいらない視点、致命的な感情なのかもしれない
けれどわたしは看護婦をやっている
どうにもこうにもすっきりしない感情が一部を支配したままだったので
ここにぶちまけさせてもらった
自分は思ってることの10分の1も吐き出せていない
もやもやした思いのまま布団に入る
もうかれこれ10年くらい
ゆっくりリハビリしながら生きている
Posted by 女神ちゃん at
◆2014年02月28日03:57
│看護婦シリーズ
雪どけおばあちゃん
朝晩ほんとに凍みるけど
午後の陽射しはほんとにやわらかくて
屋根から下がるつららの雫がきらきら光って
訪れたお宅の洗面所からみた外の畑の雪景色がそりゃもう美しくて
美しすぎて
わたしは仕事も忘れてため息をついて見とれてしまったのでした
縁側のガラス越しに
車椅子のおばあちゃん
ぽかぽか陽気にうたた寝
ひざ掛けがずり落ちそうだったので
そうっと引っ張ってあげました
起こすのがもったいないくらい気持ちよさそうで
このままおばあちゃんと日向でうたた寝できたらなぁ
と思ったのでした
午後の陽射しはほんとにやわらかくて
屋根から下がるつららの雫がきらきら光って
訪れたお宅の洗面所からみた外の畑の雪景色がそりゃもう美しくて
美しすぎて
わたしは仕事も忘れてため息をついて見とれてしまったのでした
縁側のガラス越しに
車椅子のおばあちゃん
ぽかぽか陽気にうたた寝
ひざ掛けがずり落ちそうだったので
そうっと引っ張ってあげました
起こすのがもったいないくらい気持ちよさそうで
このままおばあちゃんと日向でうたた寝できたらなぁ
と思ったのでした
Posted by 女神ちゃん at
◆2014年02月13日01:46
│看護婦シリーズ
バトル 7 最終話
それから何日かして
眉毛が脇田さんそっくりの白髪まじりの男性が
家族を連れてやってきました
その中には長身で黒い目が印象的な
脇田さんにそっくりの若い男性がいました
医師からの入浴許可はおりなかったため
ベッド上での手足浴をしました
もちろんそのそっくりのお孫さんも一緒に
「脇田さん、あっついお湯足しますよ」
目を閉じてる脇田さん
いつも難しい顔してる脇田さん
目の端がかすかに笑ってる
湯船に入ってるみたいに
「じいちゃん、気持ちいいか」
「ん 」
わたしの症例発表は
結果さんざんでした
ぜんぜんまとまりませんでした
まとめる気もありませんでした
無理でした
脇田さん、めちゃくちゃけんかしたけど
脇田さんのこと最初きらいやったけど
脇田さんのバカアホまぬけ好きやったな
ベッドの横でかくれて食べたせんべいやら団子もうまかったな
うなぎもうまかったな
脇田さん、お孫さん建築士になるんだって言ってたよ
脇田さんに似てなかなかの男前だったよ
脇田さん いろんなこと教えてくれてありがとう
「お前みたいな素直じゃない女は知らん!ほんとに看護婦か」
と言われたけど
お互いさまやで
素直じゃない脇田さん
最期はつっかえがとれたようにすっきりした、ほんとに眠るような顔で
勝手だけどわたしにはそう見えんだな
そしてわたしですが
やっぱりまだ看護婦やってます
あの日あの時
あれでよかったのかな
なんて
思うこともよくありますが
看護婦やってます
疑問だらけですが看護婦やってます
眉毛が脇田さんそっくりの白髪まじりの男性が
家族を連れてやってきました
その中には長身で黒い目が印象的な
脇田さんにそっくりの若い男性がいました
医師からの入浴許可はおりなかったため
ベッド上での手足浴をしました
もちろんそのそっくりのお孫さんも一緒に
「脇田さん、あっついお湯足しますよ」
目を閉じてる脇田さん
いつも難しい顔してる脇田さん
目の端がかすかに笑ってる
湯船に入ってるみたいに
「じいちゃん、気持ちいいか」
「ん 」
わたしの症例発表は
結果さんざんでした
ぜんぜんまとまりませんでした
まとめる気もありませんでした
無理でした
脇田さん、めちゃくちゃけんかしたけど
脇田さんのこと最初きらいやったけど
脇田さんのバカアホまぬけ好きやったな
ベッドの横でかくれて食べたせんべいやら団子もうまかったな
うなぎもうまかったな
脇田さん、お孫さん建築士になるんだって言ってたよ
脇田さんに似てなかなかの男前だったよ
脇田さん いろんなこと教えてくれてありがとう
「お前みたいな素直じゃない女は知らん!ほんとに看護婦か」
と言われたけど
お互いさまやで
素直じゃない脇田さん
最期はつっかえがとれたようにすっきりした、ほんとに眠るような顔で
勝手だけどわたしにはそう見えんだな
そしてわたしですが
やっぱりまだ看護婦やってます
あの日あの時
あれでよかったのかな
なんて
思うこともよくありますが
看護婦やってます
疑問だらけですが看護婦やってます
Posted by 女神ちゃん at
◆2012年04月14日00:26
│看護婦シリーズ
バトル 6
病状が変わったとき、状況が変わったとき
本人や家族に説明をし、今後の治療法
それに対する問題、目指す方向などを話し合います
今回は奥さんへ現在の病状説明、本人にどこまで話すか
の確認です
「あまりよくない状態です。抗がん剤の期待もあまり望めませんし、体力を奪うだけのようです。会わせたい人がいたら意識のあるうちに」
「本人には胃潰瘍ということで通したいんです。気丈に見えますがほんとのことを知ったら、どうなってしまうか・・・」
と奥さん
脇田さん、脳にも転移していました
そのせいか
体中の痛みはあまり訴えませんでした
ただ
食欲は落ち、腹水が貯まってきており
前のような威勢のいい脇田さんではなくなってきていました
脇田さんに会いたい人
脇田さんが会いたい人
脇田さんに会いたい人は
会いにこればいい
脇田さんが会いたい人は
脇田さん会いにいけないじゃん
脇田さん
今どうしたい??
「脇田さーん、夕飯です」
「食べたくない」
「そうかぁ なんか食べたいものとかあります?」
「うなぎ うなぎ屋で食べたい」
「ん~うなぎ屋か」
しかし外出許可はおりません
しかたなく出前を取ることにしました
奥さんと脇田さん、それになぜかわたしも
三人で病室でうなぎ
いいにおい
でも脇田さん半分も食べないうちにお腹いっぱいだといって横になりました
脇田さんの眺める空には何がみえるのかな
食べ物残すのきらいなわたしも
この日のうな重は最後まで食べてしまえませんでした
いつものように背中をさすっていると
「なぁ おれは胃潰瘍なんかじゃないだろ 癌なんじゃないのか?」
「ただの胃潰瘍でこんなに痩せてしまうはずがない。もう治療のしようがないのか。ほんとのことを言ってくれ」
「脇田さん、先生からおはなしありましたよね。潰瘍といっても重症なんですよ、脇田さん。だからゆっくり養生しましょうよ」
脇田さん納得できんという顔をしてそっぽをむいてしまいました
「おれはうそはきらいだ」
わたしだってうそはきらいだ
うそはつきたくない
このころは告知するかしないか半々くらいで
今のようにばんばん告知しましょうって流れではありませんでした
わたしはいつも疑問でした
告知するしない
ではなく
医療のあり方、医療そのものに対して
脇田さんは日に日に痩せ衰え、食べ物もほとんど摂らなくなっていました
ベッドの上でもひとりで座っていられません
ぼーっと外を見てる時間が長くなりました
背中をさすってくれ
という声もかすれ、聞き取りにくくなってます
「なぁ お前は田舎の両親を大事にしろよ」
「ん ありがとう」
「昔は孫をよく風呂に入れた。熱いからと嫌がられてもおれは熱い風呂が好きだったなぁ」
「ん 」
「風呂にはいりてぇなぁ」
「ん 」
「風呂入ってもいいって許可が出たら、お前手伝ってくれるか」
「ん あっつい風呂入れてやるよ ドボンて」
「・・・」
「脇田さん、お孫さんに来てもらおうか。お風呂手伝ってもらおうか」
脇田さんわたしに背中さすらせて
窓のほう向いたまま
窓ガラスに映った脇田さん
顔くしゃくしゃにしていました
本人や家族に説明をし、今後の治療法
それに対する問題、目指す方向などを話し合います
今回は奥さんへ現在の病状説明、本人にどこまで話すか
の確認です
「あまりよくない状態です。抗がん剤の期待もあまり望めませんし、体力を奪うだけのようです。会わせたい人がいたら意識のあるうちに」
「本人には胃潰瘍ということで通したいんです。気丈に見えますがほんとのことを知ったら、どうなってしまうか・・・」
と奥さん
脇田さん、脳にも転移していました
そのせいか
体中の痛みはあまり訴えませんでした
ただ
食欲は落ち、腹水が貯まってきており
前のような威勢のいい脇田さんではなくなってきていました
脇田さんに会いたい人
脇田さんが会いたい人
脇田さんに会いたい人は
会いにこればいい
脇田さんが会いたい人は
脇田さん会いにいけないじゃん
脇田さん
今どうしたい??
「脇田さーん、夕飯です」
「食べたくない」
「そうかぁ なんか食べたいものとかあります?」
「うなぎ うなぎ屋で食べたい」
「ん~うなぎ屋か」
しかし外出許可はおりません
しかたなく出前を取ることにしました
奥さんと脇田さん、それになぜかわたしも
三人で病室でうなぎ
いいにおい
でも脇田さん半分も食べないうちにお腹いっぱいだといって横になりました
脇田さんの眺める空には何がみえるのかな
食べ物残すのきらいなわたしも
この日のうな重は最後まで食べてしまえませんでした
いつものように背中をさすっていると
「なぁ おれは胃潰瘍なんかじゃないだろ 癌なんじゃないのか?」
「ただの胃潰瘍でこんなに痩せてしまうはずがない。もう治療のしようがないのか。ほんとのことを言ってくれ」
「脇田さん、先生からおはなしありましたよね。潰瘍といっても重症なんですよ、脇田さん。だからゆっくり養生しましょうよ」
脇田さん納得できんという顔をしてそっぽをむいてしまいました
「おれはうそはきらいだ」
わたしだってうそはきらいだ
うそはつきたくない
このころは告知するかしないか半々くらいで
今のようにばんばん告知しましょうって流れではありませんでした
わたしはいつも疑問でした
告知するしない
ではなく
医療のあり方、医療そのものに対して
脇田さんは日に日に痩せ衰え、食べ物もほとんど摂らなくなっていました
ベッドの上でもひとりで座っていられません
ぼーっと外を見てる時間が長くなりました
背中をさすってくれ
という声もかすれ、聞き取りにくくなってます
「なぁ お前は田舎の両親を大事にしろよ」
「ん ありがとう」
「昔は孫をよく風呂に入れた。熱いからと嫌がられてもおれは熱い風呂が好きだったなぁ」
「ん 」
「風呂にはいりてぇなぁ」
「ん 」
「風呂入ってもいいって許可が出たら、お前手伝ってくれるか」
「ん あっつい風呂入れてやるよ ドボンて」
「・・・」
「脇田さん、お孫さんに来てもらおうか。お風呂手伝ってもらおうか」
脇田さんわたしに背中さすらせて
窓のほう向いたまま
窓ガラスに映った脇田さん
顔くしゃくしゃにしていました
Posted by 女神ちゃん at
◆2012年04月13日13:51
│看護婦シリーズ
バトル 5
症例発表というのは
患者さんをひとりを全体的にみて
今どんな状態か
それによって起きる問題をあげ
具体的な対策を立て
実施し
評価する
それを繰り返して安定、解決の方向へ持っていく
それをまとめて発表する、というものです
なんて大変なんでしょう
自分のこともなにも解決できない人間なのに
「背中さすってくれ。そこじゃない、もっと右!」
「へたくそ!」
「もうお前には頼まん!」
「そうですか わかりました。じゃぁ呼ばないでくださいね!」
いつものように脇田さんと闘っていると
奥さんが洗濯物を取りにみえました
「いつもすみません」
物静かな方です
奥さんが文句を言ってるのを聞いたことがありません
「奥さん、ちょっといいですか」
少し奥さんと話してみようと思いました
「ほんといつもすみません。主人頑固で。言葉は悪いけど悪気はないんですよ。言葉が足らないんです。職人気質なんでしょうかね。下の人はかわいがってましたから慕われてました。ただ息子や嫁にはそれが伝わらなくて・・・」
悪気ないのか
じゃぁなんだ
なにかしらにつけ文句を言い、バカアホまぬけといわれつつも
互いに遠慮なく言い合っているうちになんとなく親近感を覚えるようになっていました
「実はナースコールがものすごくて仕事にならないときがあるんです。正直わたしもまいってしまって。奥さんなにか思い当たることありませんか?」
「孫は今専門学校へ行ってるんですが、小さいときからほんとにかわいがってましてね。おじいちゃん子だったんです。それが反抗期に入ってから主人とも口を利かなくなって、息子たちと一緒に出て行ってしまってからは会えずじまいで。ちょうどあなたと同じ年のころだしあなたに重ねているのかもしれませんね」
まじかよ
なんでよ
屈折してるじゃないかよ
脇田さん、ややこしい
好きなら好きと言えばいいのに
「主人、孫や息子たちに会いたいんでしょうね」
むずむず
やばい
情にもろいわたしのココロをつついてきよった
脇田妻、なかなかやる
Kちゃんにこの話をすると
「お前なんか企んどるな」
「脇田さん、孫に会いたいんやろなぁ」
「無茶な計画たてるなよ」
Kちゃんに念を押されました
今でこそ緩和ケアなどという言葉があるが当時はそれほどポピュラーでなく
病状は悪いながらもなんとか安定はしているのですが、時期としてはターミナルです
脇田さんともっと話ししよう
憎さ余ってかわいさ百倍(?)
わたしは迷走を続けます
患者さんをひとりを全体的にみて
今どんな状態か
それによって起きる問題をあげ
具体的な対策を立て
実施し
評価する
それを繰り返して安定、解決の方向へ持っていく
それをまとめて発表する、というものです
なんて大変なんでしょう
自分のこともなにも解決できない人間なのに
「背中さすってくれ。そこじゃない、もっと右!」
「へたくそ!」
「もうお前には頼まん!」
「そうですか わかりました。じゃぁ呼ばないでくださいね!」
いつものように脇田さんと闘っていると
奥さんが洗濯物を取りにみえました
「いつもすみません」
物静かな方です
奥さんが文句を言ってるのを聞いたことがありません
「奥さん、ちょっといいですか」
少し奥さんと話してみようと思いました
「ほんといつもすみません。主人頑固で。言葉は悪いけど悪気はないんですよ。言葉が足らないんです。職人気質なんでしょうかね。下の人はかわいがってましたから慕われてました。ただ息子や嫁にはそれが伝わらなくて・・・」
悪気ないのか
じゃぁなんだ
なにかしらにつけ文句を言い、バカアホまぬけといわれつつも
互いに遠慮なく言い合っているうちになんとなく親近感を覚えるようになっていました
「実はナースコールがものすごくて仕事にならないときがあるんです。正直わたしもまいってしまって。奥さんなにか思い当たることありませんか?」
「孫は今専門学校へ行ってるんですが、小さいときからほんとにかわいがってましてね。おじいちゃん子だったんです。それが反抗期に入ってから主人とも口を利かなくなって、息子たちと一緒に出て行ってしまってからは会えずじまいで。ちょうどあなたと同じ年のころだしあなたに重ねているのかもしれませんね」
まじかよ
なんでよ
屈折してるじゃないかよ
脇田さん、ややこしい
好きなら好きと言えばいいのに
「主人、孫や息子たちに会いたいんでしょうね」
むずむず
やばい
情にもろいわたしのココロをつついてきよった
脇田妻、なかなかやる
Kちゃんにこの話をすると
「お前なんか企んどるな」
「脇田さん、孫に会いたいんやろなぁ」
「無茶な計画たてるなよ」
Kちゃんに念を押されました
今でこそ緩和ケアなどという言葉があるが当時はそれほどポピュラーでなく
病状は悪いながらもなんとか安定はしているのですが、時期としてはターミナルです
脇田さんともっと話ししよう
憎さ余ってかわいさ百倍(?)
わたしは迷走を続けます
Posted by 女神ちゃん at
◆2012年04月13日00:54
│看護婦シリーズ
バトル 4
翌日から家族構成から職歴、何から何まで洗い直しです
「脇田さん何人兄弟なんですか?」
「6人」
「何番目?」
「長男」
「上から順に男、女 って教えてください」
「全部男」
「・・・」
「なんだ」
「いえ、なんにも」
6人全員脇田さん
恐怖!
「おいくつのころから大工さんされてるんですか?」
「14」
「はや!中学生??」
「昔は中学なんかなかったんだ」
「脇田さん若いころもてたでしょう~」
なんて具合に、わたしの見事な話術によって脇田さんの過去が暴かれていきます
「それじゃ家族構成もう一度教えてください。今は奥さんと長男さんご夫婦とお孫さんと住んでらっしゃるんですよね。長男さんはおいくつですか?」
「・・・」
「・・・脇田さん?」
「一緒には住んでいない」
「え?でも入院時のサマリーでは・・・」
「一緒には住んでいない。妻だけだ」
「別棟ということですか?離れとか??」
「こっちにはおらん。出て行った」
入院、転科のサマリーでは6人家族(同居)になっています
「仕事か何かの都合で転勤とか?」
「3年前に孫も連れて出て行った」
そういった後脇田さん、寝っころがっていつもの窓側向いて黙り込んでしまいました
なんだかややこしい話暴いてしまったようです
翌日奥さんが洗濯物を取りに見えたので聞いてみました
息子さん夫婦とお孫さんは脇田さんと折り合いがあわず、3年前に出て行ってそれきり一度も顔を出さない、ということ
お孫さんはちょうどわたしと同じくらいの人がいて、専門学校に通っているということ
本人が言うなと言うので今でも同居しているということにしている
とのことでした
世間体を気にしているんだろうか
そのわりにはあまり人当たりよくないな脇田さん
矛盾してるぜ脇田さん
「脇田さん、おはようございます。お体拭きにきました」
「・・・」
拒否しないのでOKなんだなという感じで全身清拭を始めます
脇田さんは状態が安定しないので入浴許可が下りません
ベッド上で体を拭くだけです
いつものように脇田さん窓のほう向いてあぐらです
こんなにごつごつになってしまって、ベッドで寝てばかり
体中痛いだろうな
しゃんとして気丈に見えるけど
そうとう疲れてるな
この背中
蒸しタオルで肩のところをじわーっとあっためます
あー脇田さん気持ちよさそう
蒸しタオルでなんだかこちらまで凝りがほどけていくようです
「脇田さん、お風呂入りたいですよね」
「・・・」
「熱めのお風呂にずるずる~って入ってみたいですよね~」
「わしも熱い風呂が好きだ」
「脇田さんもですか。わたし小さいころは熱いお風呂がきらいで。母はすぐあっつくするんですよ。いやだったなー。でもじいちゃんはぬるいお風呂でうれしかったなー。でも今は熱好きなんですけどね」
「・・・」
今
脇田さんと意見が一致したな
確かに一致したな
「脇田さん、入浴許可が出たらお風呂入りましょう!熱めで」
「お前には入れてもらわん!」
「なんで!」
「なんでもだ。お前なんかにできるか!」
決裂です
あっさり決裂です
「くそーせっかく意見一致したのに。なんであんなに頑固なんだ」
ナースステーションへもどりKちゃんにぐちります
「ふふふん」
Kちゃんはあいかわらずのんきです
そんなふうにしてKちゃんや他のスタッフに見守られながら
ますます!脇田さんとわたしの仲は深まってゆくのです
「脇田さん何人兄弟なんですか?」
「6人」
「何番目?」
「長男」
「上から順に男、女 って教えてください」
「全部男」
「・・・」
「なんだ」
「いえ、なんにも」
6人全員脇田さん
恐怖!
「おいくつのころから大工さんされてるんですか?」
「14」
「はや!中学生??」
「昔は中学なんかなかったんだ」
「脇田さん若いころもてたでしょう~」
なんて具合に、わたしの見事な話術によって脇田さんの過去が暴かれていきます
「それじゃ家族構成もう一度教えてください。今は奥さんと長男さんご夫婦とお孫さんと住んでらっしゃるんですよね。長男さんはおいくつですか?」
「・・・」
「・・・脇田さん?」
「一緒には住んでいない」
「え?でも入院時のサマリーでは・・・」
「一緒には住んでいない。妻だけだ」
「別棟ということですか?離れとか??」
「こっちにはおらん。出て行った」
入院、転科のサマリーでは6人家族(同居)になっています
「仕事か何かの都合で転勤とか?」
「3年前に孫も連れて出て行った」
そういった後脇田さん、寝っころがっていつもの窓側向いて黙り込んでしまいました
なんだかややこしい話暴いてしまったようです
翌日奥さんが洗濯物を取りに見えたので聞いてみました
息子さん夫婦とお孫さんは脇田さんと折り合いがあわず、3年前に出て行ってそれきり一度も顔を出さない、ということ
お孫さんはちょうどわたしと同じくらいの人がいて、専門学校に通っているということ
本人が言うなと言うので今でも同居しているということにしている
とのことでした
世間体を気にしているんだろうか
そのわりにはあまり人当たりよくないな脇田さん
矛盾してるぜ脇田さん
「脇田さん、おはようございます。お体拭きにきました」
「・・・」
拒否しないのでOKなんだなという感じで全身清拭を始めます
脇田さんは状態が安定しないので入浴許可が下りません
ベッド上で体を拭くだけです
いつものように脇田さん窓のほう向いてあぐらです
こんなにごつごつになってしまって、ベッドで寝てばかり
体中痛いだろうな
しゃんとして気丈に見えるけど
そうとう疲れてるな
この背中
蒸しタオルで肩のところをじわーっとあっためます
あー脇田さん気持ちよさそう
蒸しタオルでなんだかこちらまで凝りがほどけていくようです
「脇田さん、お風呂入りたいですよね」
「・・・」
「熱めのお風呂にずるずる~って入ってみたいですよね~」
「わしも熱い風呂が好きだ」
「脇田さんもですか。わたし小さいころは熱いお風呂がきらいで。母はすぐあっつくするんですよ。いやだったなー。でもじいちゃんはぬるいお風呂でうれしかったなー。でも今は熱好きなんですけどね」
「・・・」
今
脇田さんと意見が一致したな
確かに一致したな
「脇田さん、入浴許可が出たらお風呂入りましょう!熱めで」
「お前には入れてもらわん!」
「なんで!」
「なんでもだ。お前なんかにできるか!」
決裂です
あっさり決裂です
「くそーせっかく意見一致したのに。なんであんなに頑固なんだ」
ナースステーションへもどりKちゃんにぐちります
「ふふふん」
Kちゃんはあいかわらずのんきです
そんなふうにしてKちゃんや他のスタッフに見守られながら
ますます!脇田さんとわたしの仲は深まってゆくのです
Posted by 女神ちゃん at
◆2012年04月13日00:44
│看護婦シリーズ
バトル 3
「たんぽぽちゃん、ちょっと来て」
ゆりちゃんに呼ばれます
「だいじょうぶ?あなた。」
「正直もうわかりません。脇田さん、わたしを気に入らないんです。いじめて楽しんでるんです。限界です。わたしを脇田さんの担当からはずしてください」
ゆりちゃんは困ったな、という顔をして言いました
「たんぽぽちゃん、脇田さんで症例やってみない??」
「は???」
このおばちゃん何言ってんの???
ナースなりたてナースは一年に一症例、研究と発表があります
このときわたしはナース三年目で、誰に的をしぼるか迷っていました
そろそろ大きい症例をやらなきゃいけないな、とは思っていましたが
まさか
「脇田さんはたんぽぽちゃんを嫌ってやってるわけじゃないのよ。あなたに親しみがあるから、あなたになら頼みやすいから頼むんじゃないかしら」
「絶対ちがいます!脇田さんは入院のストレスから看護婦をいじめて楽しんでるんです。性格悪いんですよ、あの人」
「そうかしら・・・だったらスタッフみんなにあたってもいいんじゃない?あなただけにっていうのは、あなたにはぶつけやすいってことなのよ。これってすごいことなんだよ?」
そんなこと言って、ゆりちゃん脇田さんのこと全部わたしひとりに押し付けようとしてる
って思いました
その晩直指(直接指導者)のKちゃんにその話をしました
Kちゃんは同期入職ですが、彼女のほうが年上で免許も取っての入職です
なので看護婦としては経験も先輩なんです
でも同期でおまけにアパートの部屋が一軒おいて隣なのでしょっちゅう互いの部屋に入り浸りでした
Kちゃんはしばらくふーんと聞いていましたがやがて目をきらきらさせて言いました
「おもろそうやな、その話。やったろやないの、症例」
なんでこうなるの
売られた喧嘩
でもありません
ていうか誰とも喧嘩したくありません
症例をとるときは実名など個人情報は伏せますが
一応患者さんにも了解をもらいます
Kちゃんと一緒に脇田さんにお話にいきました
「というわけで、脇田さんにもご協力お願いしたいのですがよろしいですか?」
「・・・」
「脇田さん、いやだったらいいんですよ。無理言いませんから」
お願い いやだと言って
「・・・それをやるならお前はおれの専属看護婦なんだな」
「専属ってわけではないですが、引き続き担当させてもらいます」
とKちゃん
「じゃぁいいぞ」
え
「よかったな!おもろい症例にしよな!」
Kちゃん、そこ張り切るとこですか
おもろい症例って
わたしの白衣は灰色から喪服にかわりました(気分でした)
ゆりちゃんに呼ばれます
「だいじょうぶ?あなた。」
「正直もうわかりません。脇田さん、わたしを気に入らないんです。いじめて楽しんでるんです。限界です。わたしを脇田さんの担当からはずしてください」
ゆりちゃんは困ったな、という顔をして言いました
「たんぽぽちゃん、脇田さんで症例やってみない??」
「は???」
このおばちゃん何言ってんの???
ナースなりたてナースは一年に一症例、研究と発表があります
このときわたしはナース三年目で、誰に的をしぼるか迷っていました
そろそろ大きい症例をやらなきゃいけないな、とは思っていましたが
まさか
「脇田さんはたんぽぽちゃんを嫌ってやってるわけじゃないのよ。あなたに親しみがあるから、あなたになら頼みやすいから頼むんじゃないかしら」
「絶対ちがいます!脇田さんは入院のストレスから看護婦をいじめて楽しんでるんです。性格悪いんですよ、あの人」
「そうかしら・・・だったらスタッフみんなにあたってもいいんじゃない?あなただけにっていうのは、あなたにはぶつけやすいってことなのよ。これってすごいことなんだよ?」
そんなこと言って、ゆりちゃん脇田さんのこと全部わたしひとりに押し付けようとしてる
って思いました
その晩直指(直接指導者)のKちゃんにその話をしました
Kちゃんは同期入職ですが、彼女のほうが年上で免許も取っての入職です
なので看護婦としては経験も先輩なんです
でも同期でおまけにアパートの部屋が一軒おいて隣なのでしょっちゅう互いの部屋に入り浸りでした
Kちゃんはしばらくふーんと聞いていましたがやがて目をきらきらさせて言いました
「おもろそうやな、その話。やったろやないの、症例」
なんでこうなるの
売られた喧嘩
でもありません
ていうか誰とも喧嘩したくありません
症例をとるときは実名など個人情報は伏せますが
一応患者さんにも了解をもらいます
Kちゃんと一緒に脇田さんにお話にいきました
「というわけで、脇田さんにもご協力お願いしたいのですがよろしいですか?」
「・・・」
「脇田さん、いやだったらいいんですよ。無理言いませんから」
お願い いやだと言って
「・・・それをやるならお前はおれの専属看護婦なんだな」
「専属ってわけではないですが、引き続き担当させてもらいます」
とKちゃん
「じゃぁいいぞ」
え
「よかったな!おもろい症例にしよな!」
Kちゃん、そこ張り切るとこですか
おもろい症例って
わたしの白衣は灰色から喪服にかわりました(気分でした)
Posted by 女神ちゃん at
◆2012年04月11日23:20
│看護婦シリーズ
バトル 2
「脇田さん、今夜は脇田さんの好きなじゃことがんもどきですよ」
「お前は夕飯配ったらもう帰るのか」
「そうです。日勤ですので」
「喰わん」
「え?食べたくないんですか?気分悪いの?」
「喰わん!持っていってくれ」
それでも置いといたらちょっとは手をつけてくれるかな
と思っておいていこうとしたらまた怒鳴られたので
ナースステーションで預かることにしました
はぁ・・・むずかしい
準夜ナースに申し送って帰ります
その日はカラオケでアンルイスとブルーハーツを唄いまくりました
翌日
日勤です
深夜ナースからの申し送りで、脇田さん夕飯完食したとのこと
へー食べれたんだ しかも完食
よかった
「おはようございます、脇田さん」
訪室するとぶかぶかの浴衣、寝たまま後姿で窓のほうを見ています
脇田さんの見ている窓のそとは冬が終わって
公園の木々の枝が少し色をつけはじめ
空も少しずつ青くなりはじめたころです
「脇田さん、きょうはちょっと温かいね。花粉がそろそろ飛び始めたみたい」
「・・・」
「昨日夕食全部食べれたんですね。よかった。気分悪かったのかと思ってたんですよ」
「・・・お前じゃない看護婦が来た、夕べ。夕飯のあと背中をさすってもらおうとお前を呼んだのに」
「わたしは日勤だから帰るって言ったじゃないですか。ちゃんとその後の看護婦に申し送っときましたよ。さすってもらわなかったんですか?」
「・・・」
まだ深夜ナースが残っていたので聞いてみると
準夜も深夜も背中さすってコールはなかったようでした
ただ
「あの看護婦は帰ったのか」
とコールしてきたとのこと
そして
「腹が減った。飯をくれ」
と言ってぺろりと平らげたとのこと
脇田さん謎です
灰色の白衣を床まで引きずるような重い気持ちで他の病室をまわろうとすると
ピンポーン ピンポーン
脇田さんです
訪室すると
「背中さすってくれ」
ピンポーン ピンポーン
「足をさすってくれ」
ピンポーン ピンポーン
「背中さすってくれ」
ピンポーン ピンポーン
ピンポーン ピンポーン ピンポーン
ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン
「ゆりちゃぁ~ん!!!(泣)」
ゆりちゃんは病棟婦長です
あまりに頻回のコールでこれでは他の仕事が進みません
さすがにゆりちゃん
「今度のコールはわたしが行くから、あなたは他の業務やってきて」
それから2、3回コールありましたが
全部ゆりちゃんが行ってくれて、わたしはなんとか他の業務をこなすことができました
でもそのあとぷっつり
脇田さんからのコールが途絶えました
脇田さん いったいなに?
お昼になり昼食を脇田さんの部屋へ運ぶと
「お前おるのになんで来ん」
「わたしは脇田さんだけじゃなくて他にも患者さん受け持ってるんです。それにわたしじゃなくても看護婦来るでしょ?」
「・・・」
無言でまたも窓のほう、そっぽ向かれます
腹立つやら泣きたいやら
そっぽ向きたいのはこっちです
「お前は夕飯配ったらもう帰るのか」
「そうです。日勤ですので」
「喰わん」
「え?食べたくないんですか?気分悪いの?」
「喰わん!持っていってくれ」
それでも置いといたらちょっとは手をつけてくれるかな
と思っておいていこうとしたらまた怒鳴られたので
ナースステーションで預かることにしました
はぁ・・・むずかしい
準夜ナースに申し送って帰ります
その日はカラオケでアンルイスとブルーハーツを唄いまくりました
翌日
日勤です
深夜ナースからの申し送りで、脇田さん夕飯完食したとのこと
へー食べれたんだ しかも完食
よかった
「おはようございます、脇田さん」
訪室するとぶかぶかの浴衣、寝たまま後姿で窓のほうを見ています
脇田さんの見ている窓のそとは冬が終わって
公園の木々の枝が少し色をつけはじめ
空も少しずつ青くなりはじめたころです
「脇田さん、きょうはちょっと温かいね。花粉がそろそろ飛び始めたみたい」
「・・・」
「昨日夕食全部食べれたんですね。よかった。気分悪かったのかと思ってたんですよ」
「・・・お前じゃない看護婦が来た、夕べ。夕飯のあと背中をさすってもらおうとお前を呼んだのに」
「わたしは日勤だから帰るって言ったじゃないですか。ちゃんとその後の看護婦に申し送っときましたよ。さすってもらわなかったんですか?」
「・・・」
まだ深夜ナースが残っていたので聞いてみると
準夜も深夜も背中さすってコールはなかったようでした
ただ
「あの看護婦は帰ったのか」
とコールしてきたとのこと
そして
「腹が減った。飯をくれ」
と言ってぺろりと平らげたとのこと
脇田さん謎です
灰色の白衣を床まで引きずるような重い気持ちで他の病室をまわろうとすると
ピンポーン ピンポーン
脇田さんです
訪室すると
「背中さすってくれ」
ピンポーン ピンポーン
「足をさすってくれ」
ピンポーン ピンポーン
「背中さすってくれ」
ピンポーン ピンポーン
ピンポーン ピンポーン ピンポーン
ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン
「ゆりちゃぁ~ん!!!(泣)」
ゆりちゃんは病棟婦長です
あまりに頻回のコールでこれでは他の仕事が進みません
さすがにゆりちゃん
「今度のコールはわたしが行くから、あなたは他の業務やってきて」
それから2、3回コールありましたが
全部ゆりちゃんが行ってくれて、わたしはなんとか他の業務をこなすことができました
でもそのあとぷっつり
脇田さんからのコールが途絶えました
脇田さん いったいなに?
お昼になり昼食を脇田さんの部屋へ運ぶと
「お前おるのになんで来ん」
「わたしは脇田さんだけじゃなくて他にも患者さん受け持ってるんです。それにわたしじゃなくても看護婦来るでしょ?」
「・・・」
無言でまたも窓のほう、そっぽ向かれます
腹立つやら泣きたいやら
そっぽ向きたいのはこっちです
Posted by 女神ちゃん at
◆2012年04月11日22:58
│看護婦シリーズ
バトル
看護婦シリーズ
書いてるうちに前のがどこにあるのかわからんようになって
その度に大騒ぎになるのでカテゴリ作りました
前のも順番に仕分けいたします
まだうら若き乙女だったわたしは、とある町の総合病院に勤務していました
個室の脇田さん(仮)のナースコールが鳴ります
「はーい どうされましたか?」
「・・・」
「いまうかがいまーす」
「失礼します」
「・・・」
「どうされましたか?」
「・・・背中が痛い さすってくれ」
脇田さんは確か胆のうだったか膵臓だったかの癌でした
「どの辺ですか?ここ?」
「そこじゃない もっと上 もっと右!」
「この辺?」
「もっと右!!」
「へたくそ!もういい!!」
脇田さんは元大工の棟梁 75歳
頭はつるつる眉毛は黒々してて眉尻はぴっと跳ね上げたように上を向いていて、その下に丸い大きな目が光っています
鼻筋も通っててなかなかのいい男やったんやなぁという感じです
が、気質の荒さもその顔に表れています
最初のうちは抗がん剤の治療も積極的にしていましたがどれも効果がはっきりせず、癌細胞はゆっくりと脇田さんを蝕み今では肺や腸にも転移しており
入院時はがっちりしていた体も今は細くなってしまって、ベットの上で寝たり起きたりがやっとになっていました
脇田さんに怒鳴られ背中になんやら灰色の雲を背負ってナースステーションに戻ると、
「どうしたの?」
と先輩ナースに話しかけられます
「脇田さんに怒られました」
「え~?脇田さんに??」
「なんか脇田さん、わたしのこと嫌いみたいです わたしも脇田さん苦手です」
苦手も何も、脇田さんはわたしの担当でした 逃げれません
かわいそうやけど脇田さんも逃げれません
そういう端からまたナースコール
脇田さん
「はーい うかがいまーす」「わたしが行ってみるわ」
と先輩ナースが走っていきました
死んだ魚の目のように目の下にどろーんとクマをつくって座っていると
同期入社で先輩ナースのKちゃんがスキップでやってきます
「なんちゅう顔 ばけものか」
「Kちゃんはいつも陽気でいいね」
とため息
「上田さん、こいつのそばにおると陰気くさいのがうつるから散歩でも行きましょうね~」
なんていってKちゃんは認知症の上田さんを車椅子に乗せて鼻歌まじりに行ってしまいました
Kちゃんはさぼりの天才であり、わたしの師匠でもありました
脇田さんとこに行っていた先輩ナースが戻ってきました
「どうでした?」
「ん?なんかね アメ玉とって だって わたしも一個もらっちゃった」
そう言って先輩ナースは受け持ちの患者さんとこへ行ってしまいました
(脇田さん・・・アメ玉くらいさっきわたしが取ってあげたのに)
しばらくするとナースコール
脇田さんです
「はい うかがいまーす」
訪室すると
「なんだ お前か」
「・・・どうされましたか?」
「背中が痛い さすってくれ」
「どのへんですか?」
「そこじゃない もっと上 右!」
「この辺?」
「そこじゃない! ばかもの!」
もう泣きそうです
ていうかついさっき先輩ナースが来たときにはさすってもらわなかったんでしょうか
「お前は親は元気か」
「は?」
「親や肉親はみな元気か と聞いたんだ」
「はい おかげさまでみんな田舎で元気にしてます」
「そうか」
あとはベットの上でがりがりの身体で胡坐をかき、無言で背中をさすらせます
(あ~腕だるいな~ まだかなー)
心の声が聞こえたのか
「もういい 夕飯の後でまたやってくれ」
え またですか ?
この日は日勤で夕飯を出したらさっさと帰ってみんなでカラオケです
のはずなんですけど・・・
「脇田さんが夕飯の後に背中さすってほしいって言ってました またたぶんコールされると思います」
一応準夜のナースに申し送っておきます
エレベーターのドアが開きおいしそうな匂いが漂ってきます
夕飯出しです
栄養士の新田さんがガラゴロと配膳車を押してきます
「あ たんぽぽちゃん がんもどき余ったの持ってく?」
「いるいる!」
「後で寄って」
大病院なのにこんなことがまかり通るのもこの病院ならではです
「脇田さーん 夕飯です」
脇田さん、窓の外を見てぼんやりしています
書いてるうちに前のがどこにあるのかわからんようになって
その度に大騒ぎになるのでカテゴリ作りました
前のも順番に仕分けいたします
まだうら若き乙女だったわたしは、とある町の総合病院に勤務していました
個室の脇田さん(仮)のナースコールが鳴ります
「はーい どうされましたか?」
「・・・」
「いまうかがいまーす」
「失礼します」
「・・・」
「どうされましたか?」
「・・・背中が痛い さすってくれ」
脇田さんは確か胆のうだったか膵臓だったかの癌でした
「どの辺ですか?ここ?」
「そこじゃない もっと上 もっと右!」
「この辺?」
「もっと右!!」
「へたくそ!もういい!!」
脇田さんは元大工の棟梁 75歳
頭はつるつる眉毛は黒々してて眉尻はぴっと跳ね上げたように上を向いていて、その下に丸い大きな目が光っています
鼻筋も通っててなかなかのいい男やったんやなぁという感じです
が、気質の荒さもその顔に表れています
最初のうちは抗がん剤の治療も積極的にしていましたがどれも効果がはっきりせず、癌細胞はゆっくりと脇田さんを蝕み今では肺や腸にも転移しており
入院時はがっちりしていた体も今は細くなってしまって、ベットの上で寝たり起きたりがやっとになっていました
脇田さんに怒鳴られ背中になんやら灰色の雲を背負ってナースステーションに戻ると、
「どうしたの?」
と先輩ナースに話しかけられます
「脇田さんに怒られました」
「え~?脇田さんに??」
「なんか脇田さん、わたしのこと嫌いみたいです わたしも脇田さん苦手です」
苦手も何も、脇田さんはわたしの担当でした 逃げれません
かわいそうやけど脇田さんも逃げれません
そういう端からまたナースコール
脇田さん
「はーい うかがいまーす」「わたしが行ってみるわ」
と先輩ナースが走っていきました
死んだ魚の目のように目の下にどろーんとクマをつくって座っていると
同期入社で先輩ナースのKちゃんがスキップでやってきます
「なんちゅう顔 ばけものか」
「Kちゃんはいつも陽気でいいね」
とため息
「上田さん、こいつのそばにおると陰気くさいのがうつるから散歩でも行きましょうね~」
なんていってKちゃんは認知症の上田さんを車椅子に乗せて鼻歌まじりに行ってしまいました
Kちゃんはさぼりの天才であり、わたしの師匠でもありました
脇田さんとこに行っていた先輩ナースが戻ってきました
「どうでした?」
「ん?なんかね アメ玉とって だって わたしも一個もらっちゃった」
そう言って先輩ナースは受け持ちの患者さんとこへ行ってしまいました
(脇田さん・・・アメ玉くらいさっきわたしが取ってあげたのに)
しばらくするとナースコール
脇田さんです
「はい うかがいまーす」
訪室すると
「なんだ お前か」
「・・・どうされましたか?」
「背中が痛い さすってくれ」
「どのへんですか?」
「そこじゃない もっと上 右!」
「この辺?」
「そこじゃない! ばかもの!」
もう泣きそうです
ていうかついさっき先輩ナースが来たときにはさすってもらわなかったんでしょうか
「お前は親は元気か」
「は?」
「親や肉親はみな元気か と聞いたんだ」
「はい おかげさまでみんな田舎で元気にしてます」
「そうか」
あとはベットの上でがりがりの身体で胡坐をかき、無言で背中をさすらせます
(あ~腕だるいな~ まだかなー)
心の声が聞こえたのか
「もういい 夕飯の後でまたやってくれ」
え またですか ?
この日は日勤で夕飯を出したらさっさと帰ってみんなでカラオケです
のはずなんですけど・・・
「脇田さんが夕飯の後に背中さすってほしいって言ってました またたぶんコールされると思います」
一応準夜のナースに申し送っておきます
エレベーターのドアが開きおいしそうな匂いが漂ってきます
夕飯出しです
栄養士の新田さんがガラゴロと配膳車を押してきます
「あ たんぽぽちゃん がんもどき余ったの持ってく?」
「いるいる!」
「後で寄って」
大病院なのにこんなことがまかり通るのもこの病院ならではです
「脇田さーん 夕飯です」
脇田さん、窓の外を見てぼんやりしています
Posted by 女神ちゃん at
◆2012年04月11日22:52
│看護婦シリーズ
木こりのおじいさん 2
この日は大工の山本さん(仮)が予断をゆるさない状況で(シリーズの一番初めに書いてます)
患者さんの寝静まった病棟には緊張感が漂ってました
山本さんの病室から出ると
緑の非常灯のあかりの下に小さな何かがうずくまっています
びくっとしてよく見てみると上田さんです
木こりさんはどうやら焼き物市へ行きたかったようですが
夜も遅いので泊まっていきんさいよ
と言ったらすんなりこちらの好意(?)に甘えてくれました
車椅子に乗せて病室へ行く途中、なんか足りない
と感じたのですがとりあえずベットサイドまで行きました
で、気づきました
上田さん、今度はおしっこのカテーテルも自己抜去してました
床には抜かれたカテーテルと尿を貯めるバッグがべちゃ
と置かれていました
(上田さん・・・痛くなかったの?? ?)
カテーテルは何かに引っ掛ったりして抜けたりしないよう膀胱の中でバルーンを膨らませて
留置するようになっていて
無理に引っ張って抜けばそのまま尿管をバルーンが膨らんだまま通るので相当な痛みが伴うと思うんです
なんだか妙にすっきりした顔の上田さんをベットに寝かせ
おむつを確認して相手チームのナースへ報告し山本さんへ向かいました
そしてこの日は山本さんが亡くなり、わたしがひとり霊安室でドタバタしてる間にも
何もかもとっぱらってしまってすっきりしてしまった上田さんに
相手チームの看護婦はさらにばたばさせられて深夜勤は終わりました
その翌日から上田さん、点滴中に点滴の管自己抜去
酸素のカテーテルはつけてもつけても外してしまい
しまいにナースコールも壁から抜去
鳴りっぱなし
管という管はぜーんぶ抜去
寝巻きの紐は取ろうと思っても取れなかったのか
布団カバーの紐と結びつけてました
というか紐は紐どうし
上田さんなりになにかルールがあるようです
上田さんの担当は主任ナースでした
わたしの勤めてた病院は婦長も婦長とは呼ばないので
主任のことももちろん名前で呼びます
平田さん(仮)というんだけど、たまに下の名でみっちゃんと呼んでました
みっちゃんはばりばりに仕事が出来て
すごい美人なのにぜんぜん鼻にかけなくて
それどころか大口開けてガハハと笑うような豪快な看護婦さんで
わたしの憧れの大先輩でした
色白で髪はショートボブで肩の上のとこでくるんとカールしてて
いつも薄い唇に真っ赤な口紅を引いてまるで快活な白雪姫のような人でした
普通主任クラスのナースはほとんど担当は持たないし、ついても重い患者さんは担当しないのですが、
入院当初そんなに手のかからないはずの上田さんは今では病棟一の人気ものになっていました
管という管をとっぱらう快感を覚えた上田さんは
それから点滴を自己抜去するたびにみっちゃんに睨まれることになりました
病室で点滴すると抜いてしまうので車椅子に乗ってナースステーションで点滴です
ご飯も一人で病室でだとご飯で遊んでしまうので、これまた車椅子に乗ってナースステーションです
上田さん大人用の車椅子だと大きすぎてするすると抜け落ちてしまうので(抜け出してしまう)
小児科病棟から子供用の車椅子を借りてきてそこにちょこんです
赤い帽子の似合いそうな小人さんはいっつも目を閉じて指先だけ寝巻きの紐をかまったりしてて、
たまに小さな目を開いて隣で繕いものを(じゃなく仕事を)する白雪姫みっちゃんを見てはうっとりして(?)ふぅと小さくため息をつきまた目を閉じます
そんなディズニー映画のような光景をみてるとなんだかみっちゃんがとっても羨ましくなり
わたしも小人さんに見つめられてため息つかれたい!
などと妄想にとりつかれ
うちのチームにもボケたかわいいじいさん入院してこんかなぁ
などと願ったりして同期のKちゃんにアホかとあきられたりしました
そんな上田さんも徐々に病気は悪化し、しまいには自分でベットを降りる力もなくなり
点滴をされてもされっぱなし
おしっこの管も抜く元気もなく
白雪姫とその仲間に看取られながら亡くなりました
小人さん
小人の木こりさん
ほんとの白雪姫には会えましたか?
「・・・」
「上田さん、何をしたの?」
腰に手を当ててみっちゃんが言います
「言うに言われぬ悪いことをした」
白雪姫に言われるたびに布団にもぐったまま
小人の木こりさんはそう言ってニヤリと笑うのでした
おわり
患者さんの寝静まった病棟には緊張感が漂ってました
山本さんの病室から出ると
緑の非常灯のあかりの下に小さな何かがうずくまっています
びくっとしてよく見てみると上田さんです
木こりさんはどうやら焼き物市へ行きたかったようですが
夜も遅いので泊まっていきんさいよ
と言ったらすんなりこちらの好意(?)に甘えてくれました
車椅子に乗せて病室へ行く途中、なんか足りない
と感じたのですがとりあえずベットサイドまで行きました
で、気づきました
上田さん、今度はおしっこのカテーテルも自己抜去してました
床には抜かれたカテーテルと尿を貯めるバッグがべちゃ
と置かれていました
(上田さん・・・痛くなかったの?? ?)
カテーテルは何かに引っ掛ったりして抜けたりしないよう膀胱の中でバルーンを膨らませて
留置するようになっていて
無理に引っ張って抜けばそのまま尿管をバルーンが膨らんだまま通るので相当な痛みが伴うと思うんです
なんだか妙にすっきりした顔の上田さんをベットに寝かせ
おむつを確認して相手チームのナースへ報告し山本さんへ向かいました
そしてこの日は山本さんが亡くなり、わたしがひとり霊安室でドタバタしてる間にも
何もかもとっぱらってしまってすっきりしてしまった上田さんに
相手チームの看護婦はさらにばたばさせられて深夜勤は終わりました
その翌日から上田さん、点滴中に点滴の管自己抜去
酸素のカテーテルはつけてもつけても外してしまい
しまいにナースコールも壁から抜去
鳴りっぱなし
管という管はぜーんぶ抜去
寝巻きの紐は取ろうと思っても取れなかったのか
布団カバーの紐と結びつけてました
というか紐は紐どうし
上田さんなりになにかルールがあるようです
上田さんの担当は主任ナースでした
わたしの勤めてた病院は婦長も婦長とは呼ばないので
主任のことももちろん名前で呼びます
平田さん(仮)というんだけど、たまに下の名でみっちゃんと呼んでました
みっちゃんはばりばりに仕事が出来て
すごい美人なのにぜんぜん鼻にかけなくて
それどころか大口開けてガハハと笑うような豪快な看護婦さんで
わたしの憧れの大先輩でした
色白で髪はショートボブで肩の上のとこでくるんとカールしてて
いつも薄い唇に真っ赤な口紅を引いてまるで快活な白雪姫のような人でした
普通主任クラスのナースはほとんど担当は持たないし、ついても重い患者さんは担当しないのですが、
入院当初そんなに手のかからないはずの上田さんは今では病棟一の人気ものになっていました
管という管をとっぱらう快感を覚えた上田さんは
それから点滴を自己抜去するたびにみっちゃんに睨まれることになりました
病室で点滴すると抜いてしまうので車椅子に乗ってナースステーションで点滴です
ご飯も一人で病室でだとご飯で遊んでしまうので、これまた車椅子に乗ってナースステーションです
上田さん大人用の車椅子だと大きすぎてするすると抜け落ちてしまうので(抜け出してしまう)
小児科病棟から子供用の車椅子を借りてきてそこにちょこんです
赤い帽子の似合いそうな小人さんはいっつも目を閉じて指先だけ寝巻きの紐をかまったりしてて、
たまに小さな目を開いて隣で繕いものを(じゃなく仕事を)する白雪姫みっちゃんを見てはうっとりして(?)ふぅと小さくため息をつきまた目を閉じます
そんなディズニー映画のような光景をみてるとなんだかみっちゃんがとっても羨ましくなり
わたしも小人さんに見つめられてため息つかれたい!
などと妄想にとりつかれ
うちのチームにもボケたかわいいじいさん入院してこんかなぁ
などと願ったりして同期のKちゃんにアホかとあきられたりしました
そんな上田さんも徐々に病気は悪化し、しまいには自分でベットを降りる力もなくなり
点滴をされてもされっぱなし
おしっこの管も抜く元気もなく
白雪姫とその仲間に看取られながら亡くなりました
小人さん
小人の木こりさん
ほんとの白雪姫には会えましたか?
「・・・」
「上田さん、何をしたの?」
腰に手を当ててみっちゃんが言います
「言うに言われぬ悪いことをした」
白雪姫に言われるたびに布団にもぐったまま
小人の木こりさんはそう言ってニヤリと笑うのでした
おわり
Posted by 女神ちゃん at
◆2012年01月28日18:43
│看護婦シリーズ
木こりのおじいさん
久々の病院シリーズいってみます
前に書いたかもしれないけど
認知症の上田さん(仮)のお話します
わたしはとある町の総合病院に勤務していました
これまでのお話 →→普通のお仕事
普通のお仕事2
Xさん、2、3、4、5
労働者のまち
婦長
酸素ボンベの瀬上さん
瀬上さん 2
瀬上さん 3
瀬上さん 4 最終話
病院シリーズですか
夏向け 病院のハナシ
夏向け 病院のハナシ 2
夏向け 病院のハナシ 3
お馬さん
お馬さん 2
お馬さん 3
お馬さん 4
お馬さん 5 最終話
オペ室勤務
オペ室勤務 2
オペ室勤務 3
オペ室勤務 4
オペ室勤務 5 最終話
上田さんは担当じゃない上に、別チームの患者さんだったので病気のことはほとんど覚えてないのですが
ベースに呼吸器系の慢性疾患があって、それが悪化し入院してきました
小柄なかわいいおじいちゃん
そうだな 82、83歳くらいかな
背中も丸くなってて、髪は真っ白で顔も小さくてなんか小人の木こりのような
森の妖精のような
とんがった赤い毛糸の帽子が似合うようなかわいいおじいちゃん
わかります?この感じ
ナースコールが鳴って訪室すると
宙を指差して
「鳥が飛んどる。歌がきこえる」
とか
ベットの布団の上を目で追うように
「ネズミが運んでった」
とか言うんです
ね 木こり小人さんでしょ?
そんなある日、事件は起こりました
上田さん、肺に入っているカテーテルを自己抜去してしまったのです
再挿入も検討したようですが、最抜去も考えられるため危険なので挿入せず経過観察となりました
ナースコールが鳴って訪室すると上田さん、両手で頭を抱えてるんです
「どうしたの?上田さん」
「・・・」
「大丈夫?どうしたの?」
とかがむと
「言うに言われぬ悪いことをした」
「ん?」
「言うに言われぬ悪いことをした」
上田さん、自己抜去のこと言ってるんだろうか
「そうなの?なんか悪いことしたの?」
「・・・」
あいかわらず頭を抱えています
なんかかわいそうになってしまって
「してしまったことはしかたないですよ。それでそのしてしまったことで上田さん困ってるの?」
と聞くと
「すっきりした」
というのです
なんだか嬉しくなってしまって
「そっか。そんならよかったじゃないですか」
(よいのか???)
「・・・」
カテーテル(自己)抜去してしまったのでまたベット上安静に逆戻りです
もぞもぞと上田さん布団に潜り込んで頭から布団かぶって寝てしまいました
すっきりしたのに安静か
退屈やろうなぁ
その日は深夜勤入りでした
前に書いたかもしれないけど
認知症の上田さん(仮)のお話します
わたしはとある町の総合病院に勤務していました
これまでのお話 →→普通のお仕事
普通のお仕事2
Xさん、2、3、4、5
労働者のまち
婦長
酸素ボンベの瀬上さん
瀬上さん 2
瀬上さん 3
瀬上さん 4 最終話
病院シリーズですか
夏向け 病院のハナシ
夏向け 病院のハナシ 2
夏向け 病院のハナシ 3
お馬さん
お馬さん 2
お馬さん 3
お馬さん 4
お馬さん 5 最終話
オペ室勤務
オペ室勤務 2
オペ室勤務 3
オペ室勤務 4
オペ室勤務 5 最終話
上田さんは担当じゃない上に、別チームの患者さんだったので病気のことはほとんど覚えてないのですが
ベースに呼吸器系の慢性疾患があって、それが悪化し入院してきました
小柄なかわいいおじいちゃん
そうだな 82、83歳くらいかな
背中も丸くなってて、髪は真っ白で顔も小さくてなんか小人の木こりのような
森の妖精のような
とんがった赤い毛糸の帽子が似合うようなかわいいおじいちゃん
わかります?この感じ
ナースコールが鳴って訪室すると
宙を指差して
「鳥が飛んどる。歌がきこえる」
とか
ベットの布団の上を目で追うように
「ネズミが運んでった」
とか言うんです
ね 木こり小人さんでしょ?
そんなある日、事件は起こりました
上田さん、肺に入っているカテーテルを自己抜去してしまったのです
再挿入も検討したようですが、最抜去も考えられるため危険なので挿入せず経過観察となりました
ナースコールが鳴って訪室すると上田さん、両手で頭を抱えてるんです
「どうしたの?上田さん」
「・・・」
「大丈夫?どうしたの?」
とかがむと
「言うに言われぬ悪いことをした」
「ん?」
「言うに言われぬ悪いことをした」
上田さん、自己抜去のこと言ってるんだろうか
「そうなの?なんか悪いことしたの?」
「・・・」
あいかわらず頭を抱えています
なんかかわいそうになってしまって
「してしまったことはしかたないですよ。それでそのしてしまったことで上田さん困ってるの?」
と聞くと
「すっきりした」
というのです
なんだか嬉しくなってしまって
「そっか。そんならよかったじゃないですか」
(よいのか???)
「・・・」
カテーテル(自己)抜去してしまったのでまたベット上安静に逆戻りです
もぞもぞと上田さん布団に潜り込んで頭から布団かぶって寝てしまいました
すっきりしたのに安静か
退屈やろうなぁ
その日は深夜勤入りでした
Posted by 女神ちゃん at
◆2012年01月28日17:47
│看護婦シリーズ
オペ室勤務 5 最終話
大声で歌いながら泣き笑い(?)しながらかなり適当に掃除を済ませ
さっさと片付けて着替えて足早にエレベーターに乗り込みます
その早いこと
やればできるんです
エレベーターの中はひとり
鏡は見ません!
振り向きません!
唄います!
チン
3階あたり
大口で唄っていたところにエレベーターのドアが開き
付き添いさんかお見舞いの患者さんが乗り込んできます
本来なら恥ずかしい姿なのでしょうが
もうその人にすがり付いて泣き出したい衝動に駆られます
衝動を抑えます
うれし涙で前が見えません
一階まで降りて受付まで行きます 前のめりです
「なんできてくんなかったんだよ~!」
鼻水も涙も一緒になってぐちゃぐちゃです
「きたねー!よるな!!」
そのあと福田くんにフルーツ牛乳を買ってもらい鼻をかんで
帰りました
翌日
朝からオペ室勤務
オペ室のナースさんが言います
「昨日の足、誰が運んでくれた?たんぽぽちゃん??ありがとう 重かったでしょ」
「はい? 足って??」
「ダンボールよ 長いの」
「はい??」
「日誌見た?アンプタ(切除、切断)あったでしょ 第1(オペ室)で」
わたしは前日、生霊に話かけられていたのでした
おわり
さっさと片付けて着替えて足早にエレベーターに乗り込みます
その早いこと
やればできるんです
エレベーターの中はひとり
鏡は見ません!
振り向きません!
唄います!
チン
3階あたり
大口で唄っていたところにエレベーターのドアが開き
付き添いさんかお見舞いの患者さんが乗り込んできます
本来なら恥ずかしい姿なのでしょうが
もうその人にすがり付いて泣き出したい衝動に駆られます
衝動を抑えます
うれし涙で前が見えません
一階まで降りて受付まで行きます 前のめりです
「なんできてくんなかったんだよ~!」
鼻水も涙も一緒になってぐちゃぐちゃです
「きたねー!よるな!!」
そのあと福田くんにフルーツ牛乳を買ってもらい鼻をかんで
帰りました
翌日
朝からオペ室勤務
オペ室のナースさんが言います
「昨日の足、誰が運んでくれた?たんぽぽちゃん??ありがとう 重かったでしょ」
「はい? 足って??」
「ダンボールよ 長いの」
「はい??」
「日誌見た?アンプタ(切除、切断)あったでしょ 第1(オペ室)で」
わたしは前日、生霊に話かけられていたのでした
おわり
Posted by 女神ちゃん at
◆2011年10月27日22:19
│看護婦シリーズ
オペ室勤務 4
おじさんこっちを見ています
目が合いました
へ?
という顔したと思います わたし
そしたらおじさんこういうんです
「おれの左足どこ行った」
「へ??」
今度は声出して言ってみました
そしたらおじさんもういませんでした
? ??
びっくりするやら気味が悪いやらで
ぞうきんほっぽりだして
ミーティングルームまで飛んでいきます
といってもだーれもいません
急いでゆうせんの音をあげてJ-POPなんかにします
こんなときは日本語が一番落ち着くんです(ほんとです)
心臓がバクバクいってます
落ち着け 落ち着け
いくらびっくりしたからといってもこのまま掃除ほっぽりだして帰るわけにもいきません
落ち着きたいので電話までいってみます
受話器を上げ一瞬迷ったけど内線まわしてみます
「はい 受付福田です」
「福田ぐ~ん!(泣)」
福田くんは同期ですが大学出で年上の事務さんです
わたしより怖がりです
「なんだお前か さぼんなよ」
「お願い 6階までぎで~(泣)」
「は?どうした??」
「出た~(泣)」
「へ??やだよ!なに言ってんだよ ちゃんと仕事しろよ」
ガチャン
なんだよこのやろ~!
恋愛相談のってやってんのに
恋のキューピッドもやってやったのに
冷てぇやつだ
でも人の声をきいたせいかちょっと平静を取り戻し
よしっ!!!
再び掃除を開始です
もう歌唄いまくりの踊りまくりです
オペ室は窓はなく空調してあるので風が急に吹いてきたりすることはありません
それでも第5オペ室のほうで点滴台が動いたり
第1オペ室の入り口に立てかけてあるモップが倒れたり
器械がガチャなんて音をたてたり準備室のガウンが落ちたりします
もう何でも来やがれ!!!です
目が合いました
へ?
という顔したと思います わたし
そしたらおじさんこういうんです
「おれの左足どこ行った」
「へ??」
今度は声出して言ってみました
そしたらおじさんもういませんでした
? ??
びっくりするやら気味が悪いやらで
ぞうきんほっぽりだして
ミーティングルームまで飛んでいきます
といってもだーれもいません
急いでゆうせんの音をあげてJ-POPなんかにします
こんなときは日本語が一番落ち着くんです(ほんとです)
心臓がバクバクいってます
落ち着け 落ち着け
いくらびっくりしたからといってもこのまま掃除ほっぽりだして帰るわけにもいきません
落ち着きたいので電話までいってみます
受話器を上げ一瞬迷ったけど内線まわしてみます
「はい 受付福田です」
「福田ぐ~ん!(泣)」
福田くんは同期ですが大学出で年上の事務さんです
わたしより怖がりです
「なんだお前か さぼんなよ」
「お願い 6階までぎで~(泣)」
「は?どうした??」
「出た~(泣)」
「へ??やだよ!なに言ってんだよ ちゃんと仕事しろよ」
ガチャン
なんだよこのやろ~!
恋愛相談のってやってんのに
恋のキューピッドもやってやったのに
冷てぇやつだ
でも人の声をきいたせいかちょっと平静を取り戻し
よしっ!!!
再び掃除を開始です
もう歌唄いまくりの踊りまくりです
オペ室は窓はなく空調してあるので風が急に吹いてきたりすることはありません
それでも第5オペ室のほうで点滴台が動いたり
第1オペ室の入り口に立てかけてあるモップが倒れたり
器械がガチャなんて音をたてたり準備室のガウンが落ちたりします
もう何でも来やがれ!!!です
Posted by 女神ちゃん at
◆2011年10月27日21:47
│看護婦シリーズ
オペ室勤務 3
第2から第5まで終わりました
一部屋ごとに消毒薬は作り変えます
なかなかに時間がかかります
あーはよ帰りたいなぁ
外はもう真っ暗なんだろうな
オペ室ですから
窓は当然ありません
ちなみに隣の霊安室にも解剖室にも
消毒薬を作り変えて第1オペ室の壁拭きをします
奥から入り口に向って拭いていきます
壁の方見ながら出入り口の自動ドアのところまで拭き進めていくと
(掃除中なので自動ドアのスイッチはオフにしてあります)
ふと真横、右隣に気配を感じるのです
へ?
と思って横を向いてみました
おじさんが病院の寝巻き姿で立っていました
一部屋ごとに消毒薬は作り変えます
なかなかに時間がかかります
あーはよ帰りたいなぁ
外はもう真っ暗なんだろうな
オペ室ですから
窓は当然ありません
ちなみに隣の霊安室にも解剖室にも
消毒薬を作り変えて第1オペ室の壁拭きをします
奥から入り口に向って拭いていきます
壁の方見ながら出入り口の自動ドアのところまで拭き進めていくと
(掃除中なので自動ドアのスイッチはオフにしてあります)
ふと真横、右隣に気配を感じるのです
へ?
と思って横を向いてみました
おじさんが病院の寝巻き姿で立っていました
Posted by 女神ちゃん at
◆2011年10月27日21:42
│看護婦シリーズ
オペ室勤務 2
「お願いしまーす」
「手で持ってきたの??」
「はい 意外と軽かったんで」
「あ そう ごくろうさま」
またエレベーターで6階まで上がって今度は掃除です
オペ室の婦長が帰っていきます
「あとよろしくね~」
みんなが帰った後とりあえずクラシックの流れているゆうせんを
アメリカンヒッツに変えます
音量もぐんと上げちゃいます
がんがんです
だって6階、だーれもいないんですもん
オペ室と霊安室、解剖室だけしかない
霊安室にだれか寝てたらだーれもじゃないけど
チーン
さぁて
掃除の前に
腹が減っては歌も唄えないので
腹ごしらえです
コンビニで買ってきたパンとコーヒー牛乳を取り出し
腰掛けます
どんなオペが行われたかなどの記載のある日誌が置いてあるので
その日どんなオペがどの部屋で行われたかをだいたい見てみます
ゆうせんからはシンディ・ローパーが流れています
ゴキゲンで大声で歌います
とりあえずお腹に食べ物が入ったので
腹いっぱいになったのかどうなのかはわかりませんが仕事にかかります
バケツに消毒薬を配合し雑巾で壁を拭きます
まず小さい部屋から行きます
でっかいのは面倒なので後回し
ふんふんと鼻歌まじりで壁を拭き拭き
その後は床のモップがけです
同じようにまた消毒薬を作り床を掃除します
だいたいの汚れはオペ終了時にナースさんが拭きとっているので大して汚れていません
が、まれに血がこびりついててなかなか取れないこともあります
吸引瓶には血液や洗浄液がたっぷり残っています
それを外して運びます
滑って転んだら最悪です
慎重に運んで瓶を消毒液に浸します
モニターやワゴンや寝台も拭き拭きします
床もモップで拭き拭きします
ボンジョビがゆうせんから流れてきたりするとモップの柄はマイクスタンドになります
「手で持ってきたの??」
「はい 意外と軽かったんで」
「あ そう ごくろうさま」
またエレベーターで6階まで上がって今度は掃除です
オペ室の婦長が帰っていきます
「あとよろしくね~」
みんなが帰った後とりあえずクラシックの流れているゆうせんを
アメリカンヒッツに変えます
音量もぐんと上げちゃいます
がんがんです
だって6階、だーれもいないんですもん
オペ室と霊安室、解剖室だけしかない
霊安室にだれか寝てたらだーれもじゃないけど
チーン
さぁて
掃除の前に
腹が減っては歌も唄えないので
腹ごしらえです
コンビニで買ってきたパンとコーヒー牛乳を取り出し
腰掛けます
どんなオペが行われたかなどの記載のある日誌が置いてあるので
その日どんなオペがどの部屋で行われたかをだいたい見てみます
ゆうせんからはシンディ・ローパーが流れています
ゴキゲンで大声で歌います
とりあえずお腹に食べ物が入ったので
腹いっぱいになったのかどうなのかはわかりませんが仕事にかかります
バケツに消毒薬を配合し雑巾で壁を拭きます
まず小さい部屋から行きます
でっかいのは面倒なので後回し
ふんふんと鼻歌まじりで壁を拭き拭き
その後は床のモップがけです
同じようにまた消毒薬を作り床を掃除します
だいたいの汚れはオペ終了時にナースさんが拭きとっているので大して汚れていません
が、まれに血がこびりついててなかなか取れないこともあります
吸引瓶には血液や洗浄液がたっぷり残っています
それを外して運びます
滑って転んだら最悪です
慎重に運んで瓶を消毒液に浸します
モニターやワゴンや寝台も拭き拭きします
床もモップで拭き拭きします
ボンジョビがゆうせんから流れてきたりするとモップの柄はマイクスタンドになります
Posted by 女神ちゃん at
◆2011年10月27日15:42
│看護婦シリーズ
オペ室勤務
これまでの病院関連のお話→普通のお仕事
普通のお仕事2
Xさん、2、3、4、5
労働者のまち
婦長
酸素ボンベの瀬上さん
瀬上さん 2
瀬上さん 3
瀬上さん 4 最終話
病院シリーズですか
夏向け 病院のハナシ
夏向け 病院のハナシ 2
夏向け 病院のハナシ 3
お馬さん
お馬さん 2
お馬さん 3
お馬さん 4
お馬さん 5 最終話
幽霊話、リクエストあったんですが
こういう話ってのは普通に世間話みたいに話すとどうもマズイみたいですね
世の中は「見える」人と「見えない」人に分類されていて、
「見えない」人にとっては「見える」=「あぶない人」ということになってしまうようなんです
それまで友だちだと思ってた人が急によそよそしくなったり、
あからさまに電話を切られたり
塩を投げつけられたり
なんてことはありませんが
「見える」人にとってはそんなつもりがなくても見えたり感じてしまうので
それが当たり前で、疑いようがない
「見えない」人にとっては目に見えないんだからまったく信じられない!
こいつ頭おかしいんじゃないか?!
ていうことなんだと思います
たぶん永遠に和解できないもんだと思っております
わたしは20代、とある市の総合病院に勤めておりました
午前中仕事、午後授業(または実習)、夕方からまた仕事
という具合に学校と職場を行ったり来たりで働きながら看護婦学校に通い、免許をとりました
その学生だった頃、中央材料室と隣のオペ室に配属だったことがありました
といってもまだ免許も持たないためオペ室に勤務と言っても
直接オペに立ち会うことはありません
見学はさせてもらいましたけどね
学校が終わって夕方仕事に出て行くと、
オペも終わりミーティングも終えたドクターやナースが帰るのと交替します
学生のわたしのために「掃除」といった仕事がちゃぁんと残してあるのです
「第1、2、3、5オペ室までお願いね あとここのダンボールは今一階まで運んでもらえるかしら」
とりあえず言われたダンボールを一階の言われたところまで運びます
横に大きい(長い)ので台車で行こうかな
と思ったけど持ってみたら意外と軽かったので手で持ってエレベーターに乗りました
6階から1階
6階から利用する人なんて滅多にいません
途中からも誰も乗らず下まで一気に下りました
エレベーターの中の自分
ダンボール抱えた自分
ん オペ着 なかなか似合ってるな
なんてエレベーターの中の鏡でチェックしながら
チン
ダンボールを抱え降ります
中のものが箱の中で転がっています
箱ぎっしりに詰まってるんじゃないんだな
なんて思いながら
箱の中身はなんじゃろな
壊れ物じゃないよな
なんて思いながら
下で待っていた職員さんに手渡します
普通のお仕事2
Xさん、2、3、4、5
労働者のまち
婦長
酸素ボンベの瀬上さん
瀬上さん 2
瀬上さん 3
瀬上さん 4 最終話
病院シリーズですか
夏向け 病院のハナシ
夏向け 病院のハナシ 2
夏向け 病院のハナシ 3
お馬さん
お馬さん 2
お馬さん 3
お馬さん 4
お馬さん 5 最終話
幽霊話、リクエストあったんですが
こういう話ってのは普通に世間話みたいに話すとどうもマズイみたいですね
世の中は「見える」人と「見えない」人に分類されていて、
「見えない」人にとっては「見える」=「あぶない人」ということになってしまうようなんです
それまで友だちだと思ってた人が急によそよそしくなったり、
あからさまに電話を切られたり
塩を投げつけられたり
なんてことはありませんが
「見える」人にとってはそんなつもりがなくても見えたり感じてしまうので
それが当たり前で、疑いようがない
「見えない」人にとっては目に見えないんだからまったく信じられない!
こいつ頭おかしいんじゃないか?!
ていうことなんだと思います
たぶん永遠に和解できないもんだと思っております
わたしは20代、とある市の総合病院に勤めておりました
午前中仕事、午後授業(または実習)、夕方からまた仕事
という具合に学校と職場を行ったり来たりで働きながら看護婦学校に通い、免許をとりました
その学生だった頃、中央材料室と隣のオペ室に配属だったことがありました
といってもまだ免許も持たないためオペ室に勤務と言っても
直接オペに立ち会うことはありません
見学はさせてもらいましたけどね
学校が終わって夕方仕事に出て行くと、
オペも終わりミーティングも終えたドクターやナースが帰るのと交替します
学生のわたしのために「掃除」といった仕事がちゃぁんと残してあるのです
「第1、2、3、5オペ室までお願いね あとここのダンボールは今一階まで運んでもらえるかしら」
とりあえず言われたダンボールを一階の言われたところまで運びます
横に大きい(長い)ので台車で行こうかな
と思ったけど持ってみたら意外と軽かったので手で持ってエレベーターに乗りました
6階から1階
6階から利用する人なんて滅多にいません
途中からも誰も乗らず下まで一気に下りました
エレベーターの中の自分
ダンボール抱えた自分
ん オペ着 なかなか似合ってるな
なんてエレベーターの中の鏡でチェックしながら
チン
ダンボールを抱え降ります
中のものが箱の中で転がっています
箱ぎっしりに詰まってるんじゃないんだな
なんて思いながら
箱の中身はなんじゃろな
壊れ物じゃないよな
なんて思いながら
下で待っていた職員さんに手渡します
Posted by 女神ちゃん at
◆2011年10月27日15:07
│看護婦シリーズ
お馬さん 5 最終話
「大丈夫か?」
「中西さん・・・!」
抱きついて泣きだしました
なんて特典はありません
「トイレだよ おじさんはね悲しい生き物なのよ」
「中西さん、すんません ありがとう」
大部屋だし、いくらなんでも と、他の患者さんの迷惑になっては と
そう思って大声を出さなかったわたしですが
中西さんによって助かりました
息巻いて詰め所へ戻ると根木っちがちょうどやってきたところでした
「根木ちゃん遅い!!!」
は? という顔しています
いきさつを根木っちとチワワに話すと
「あぶなかったねー」
「整形の患者さんて元気だっていうけどほんとなんですねぇ」
などとのんきに言ってます
「元気だねー、あぶなかったねー じゃないです!!乙女になにかあったらどう責任とってくれるんですか!」
「そんな簡単になんかならないでしょ」
根木 ばらすぞ
ちゅーか 根木 死なす
そんなとんでもない深夜勤も夜が明けて日勤帯に申し送りして開放です
もういらいらでへろへろでふらふらのぺこぺこです
帰ろうとしているとお馬さんがやってきました
「これから検査や これでOKなら退院決定 そしたらカラオケ行こな」
「よっしゃ!健闘を祈るわ 中西さん 夕べありがとね」
「ん?なんのこと?」
中西さんは太田さんのこともわたしのことも大事にしないように気をつかってくださったのです
「じゃ 検査行ってまいります!」
「行ってらっしゃい!わたくしは帰って寝ます!」
「おぅ おつかれさん」
階段を2段降りたくらいでお馬さんが振り返って言いました
「くたばれ じじい か ははは」
その後も
太田さんはなんだかんだあり、結局強制退院になりました
しゃあないですわね
お馬さんはその後無事退院の運びとなり、カラオケ大会(?)も無事終了の運びとなりました
お馬さんはそれからも何度も入退院を繰り返し、わたしの異動があっても相変わらずそのたびにカラオケ行ったりしてました
わたしがその病院を辞めるときは送別会までしてくれました
それからも年賀状だけはやり取りしてました
数年後の年末、中西さんは中西さんでも下の名前が違う中西さんから喪中のはがきが届きました
お馬さんがなんの仕事してたんかは知りません 忘れました
入退院を繰り返して、そのたびに少しずつ弱っていくお馬さんを
わたしはただ気付かない振りして見てることしかできませんでした
一緒になって看護婦仲間とカラオケ行ったり、おうちでごちそうしてくれるあたたかい中西家に甘えて
お馬さんの懐の広さ、深さに甘えてわたしは
ただ甘えていただけのわたしでした
あれからもう十数年たったけど
「くたばれ じじい か ははは」
と笑った植木等似のお馬さんの顔が今でも忘れられません
Posted by 女神ちゃん at
◆2011年08月24日14:23
│看護婦シリーズ
お馬さん 4
は???
太田さんに右腕を掴まれベットに引き倒されました
へ?
「な いいやろ な 」
なにが???
看護婦やってるといろんなことありますが、当時まだ二十歳そこそこ
いきなり大部屋のおっさんのベットに押し倒されるとは思ってもみませんでした
「なにするんですか」
「な な 」
なにが な じゃ!!
おっさん胸苦しんじゃないのかよ!
なんとかしてその場から逃れようとしていると
ゴホン
スリッパを履く音がします
太田さんのカーテンのところまで来てもひとつ
ゴホン
太田さんがひるんだ隙に抜け出します
「くたばれ じじい」
吐き捨てて病室を出ました
トイレの前にお馬さんが立ってました
太田さんに右腕を掴まれベットに引き倒されました
へ?
「な いいやろ な 」
なにが???
看護婦やってるといろんなことありますが、当時まだ二十歳そこそこ
いきなり大部屋のおっさんのベットに押し倒されるとは思ってもみませんでした
「なにするんですか」
「な な 」
なにが な じゃ!!
おっさん胸苦しんじゃないのかよ!
なんとかしてその場から逃れようとしていると
ゴホン
スリッパを履く音がします
太田さんのカーテンのところまで来てもひとつ
ゴホン
太田さんがひるんだ隙に抜け出します
「くたばれ じじい」
吐き捨てて病室を出ました
トイレの前にお馬さんが立ってました
Posted by 女神ちゃん at
◆2011年08月24日14:13
│看護婦シリーズ
お馬さん 3
ピンポーン ピンポーン
ナースコールです
大部屋の太田さんです
懐中電気をもって訪室します
「どうされました?」
「胸が苦しい」
「どんな感じですか?息苦しいの?痛いの??」
と聞きながら脈を診ます
脈は異常なさそう
顔色もいい 呼吸状態も
血圧計を と思い詰め所へもどります
チワワは新患に追われているのでいません
ま あとで報告すればいいか
大部屋へ戻って血圧を測ります
「146/89」
高めではあるけど、むちゃくちゃ高いわけではないし
「どんな感じですか?今までにこういうことはありましたか?」
「苦しい」
そういってるわりになんだか苦しそうというより落ち着きがない
という印象を受けたわたしは
なんかやっぱ変!
と思い、とりあえずチワワに報告して当直医に連絡することにしました
当直コールすると根木先生でした
なんじゃ 根木っちか
根木っちは研修医ですがちょっと男前で、看護学生や、若い看護婦さんに人気でした
でもわたしのタイプではありませんでした
ナイショだったらしいですが同期の学生の友人と付き合ってました
その子はちょーかわいい子でした
性格はやばかったですが
余談でした
「とりあえず心電図とっておいて すぐいくから」
とのこと
心電計を持って太田さんの部屋に訪れると
なんと週刊誌を読んでました
「太田さん、大丈夫なんですか??」
「なんだ」
「いや 胸が苦しいっていうから心電図とらせてもらおうって思って」
「ふーん」
もう治まったの?
もちょっと早くこればよかった
でもとりあえず心電図はとらないと
「太田さん、胸苦しいのは治まったかもしれないですが、一応心電図はとらせてもらいますね 横になっていただいて服を上に上げてもらえますか?」
「・・・・」
本意じゃない という表情で横になる太田さん
「ちょっと冷たいの付けますよ」
と装着しようとしたら
いきなり
がばっ
は??
ナースコールです
大部屋の太田さんです
懐中電気をもって訪室します
「どうされました?」
「胸が苦しい」
「どんな感じですか?息苦しいの?痛いの??」
と聞きながら脈を診ます
脈は異常なさそう
顔色もいい 呼吸状態も
血圧計を と思い詰め所へもどります
チワワは新患に追われているのでいません
ま あとで報告すればいいか
大部屋へ戻って血圧を測ります
「146/89」
高めではあるけど、むちゃくちゃ高いわけではないし
「どんな感じですか?今までにこういうことはありましたか?」
「苦しい」
そういってるわりになんだか苦しそうというより落ち着きがない
という印象を受けたわたしは
なんかやっぱ変!
と思い、とりあえずチワワに報告して当直医に連絡することにしました
当直コールすると根木先生でした
なんじゃ 根木っちか
根木っちは研修医ですがちょっと男前で、看護学生や、若い看護婦さんに人気でした
でもわたしのタイプではありませんでした
ナイショだったらしいですが同期の学生の友人と付き合ってました
その子はちょーかわいい子でした
性格はやばかったですが
余談でした
「とりあえず心電図とっておいて すぐいくから」
とのこと
心電計を持って太田さんの部屋に訪れると
なんと週刊誌を読んでました
「太田さん、大丈夫なんですか??」
「なんだ」
「いや 胸が苦しいっていうから心電図とらせてもらおうって思って」
「ふーん」
もう治まったの?
もちょっと早くこればよかった
でもとりあえず心電図はとらないと
「太田さん、胸苦しいのは治まったかもしれないですが、一応心電図はとらせてもらいますね 横になっていただいて服を上に上げてもらえますか?」
「・・・・」
本意じゃない という表情で横になる太田さん
「ちょっと冷たいの付けますよ」
と装着しようとしたら
いきなり
がばっ
は??
Posted by 女神ちゃん at
◆2011年08月24日12:58
│看護婦シリーズ