招待状
「月がキレイですよ」
と手紙が来た
そいつは
街の立ち寄った本屋で
ふと手に取った本の
開いたすぐ裏表紙にちょこんとはさんであって
きれいに四角く折られていた
手紙には
みかんの葉が一枚添えられていて
丁寧に折られた手紙からはネロリの薫りがした
不思議に思ってもう一度本の背表紙を見てみたが
見たことのない名前の小説家のもので
その手紙とは無関係に見えた
そのときグレーのコートの襟を首まで立てた婦人が
玄関の自動ドアに立ったので
陽の落ちた外の風がさあっと流れ込んできて
手紙についたネロリと
冷たい冬のにおいが
まざってぼくの鼻の前を通り過ぎた
ぼくはその手紙をそっと抜き取り
本屋の親父に見つからないように
そっとコートのポケットに入れた
そして何もなかったようにその本を棚に戻すと
手紙をポケットに忍ばせたまま
すこし通路を歩いて
参考書を手にとってレジに立った
本屋の親父はめがねを下げてレジを打ち込んで
ぼくはお釣りを受け取り
小銭入れに入れて店を出た
表の空気は思ったより冷たくて
歩き出したら鼻がすぐ痛くなった
ポケットに手をつっこむ
左のポケットには小銭入れ
右のポケットには定期入れと手紙
ぼくはその手紙をポケットの中で
きれいに四角く折られた角を何度も指でさわりながら
葉の落ちきった歩道を歩いた
「月がキレイですよ」
小さなすこしはなれた文字は白い紙の真ん中あたりに
ぽつぽつと書かれていたっけ
空を見上げたら
三日月がぽか と
浮かんでいた
と手紙が来た
そいつは
街の立ち寄った本屋で
ふと手に取った本の
開いたすぐ裏表紙にちょこんとはさんであって
きれいに四角く折られていた
手紙には
みかんの葉が一枚添えられていて
丁寧に折られた手紙からはネロリの薫りがした
不思議に思ってもう一度本の背表紙を見てみたが
見たことのない名前の小説家のもので
その手紙とは無関係に見えた
そのときグレーのコートの襟を首まで立てた婦人が
玄関の自動ドアに立ったので
陽の落ちた外の風がさあっと流れ込んできて
手紙についたネロリと
冷たい冬のにおいが
まざってぼくの鼻の前を通り過ぎた
ぼくはその手紙をそっと抜き取り
本屋の親父に見つからないように
そっとコートのポケットに入れた
そして何もなかったようにその本を棚に戻すと
手紙をポケットに忍ばせたまま
すこし通路を歩いて
参考書を手にとってレジに立った
本屋の親父はめがねを下げてレジを打ち込んで
ぼくはお釣りを受け取り
小銭入れに入れて店を出た
表の空気は思ったより冷たくて
歩き出したら鼻がすぐ痛くなった
ポケットに手をつっこむ
左のポケットには小銭入れ
右のポケットには定期入れと手紙
ぼくはその手紙をポケットの中で
きれいに四角く折られた角を何度も指でさわりながら
葉の落ちきった歩道を歩いた
「月がキレイですよ」
小さなすこしはなれた文字は白い紙の真ん中あたりに
ぽつぽつと書かれていたっけ
空を見上げたら
三日月がぽか と
浮かんでいた
Posted by 女神ちゃん at
◆2012年11月16日23:14
│スキマ