「走り出しそうな想いってのありますか?」

「はい、置いてございます」

「それ、ひとつください。おいくらですか」

「580円です」

1000円札をだしておつりを受けとると
店の親仁が壁の引き出しから商品を出してきた
そいつを受け取り出口へ向かおうとしてわたしは立ち止まった

「走り出しそうな想いを入れる箱ありますか」

「はい、置いてございますよ」

「それ、ひとつください。おいくらですか」

「130円です」

さっきのおつりをポケットから出してそれで支払うと
店の親仁は走り出しそうな想いを箱に詰めてくれた

「ありがとうございます。」

親仁は鼻にかけた眼鏡をずり上げ箱を差し出し
わたしはそれを受け取ると店のドアを開けて外へ出た

外は風が強かった
走り出しそうな想いを抱えてわたしはこれから向かう場所がどこか
もう一度考えてみようとしたが
どうしてもそれがはっきりと思い出せず
ただその箱を脇に抱え
とにかく
歩き出してみたのだった






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Posted by 女神ちゃん at ◆2013年04月15日01:10スキマ
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