月旅行
月夜のあかりで散歩した
キンと冷たい空気は鼻が痛くなる
パーカーのフードをかぶって
手袋してマフラー鼻まで上げて
そうしたら
眼鏡がくもって
やがてそれも凍った
凍った眼鏡のフィルターから覗く世界は
車のライトや信号が虹色で
顔を上げたら満月のまわりに虹がかかっていた
「ファンタスティック!」
と叫ぶと娘が
「わたしにも眼鏡かして」
という
「ファンタスティック!!」
鼻を赤くして
白くくもった眼鏡をした娘は
青、黄、赤とかわる信号をみて叫んだ
公園のベンチは脚が雪に埋もれ
回転式ジャングルジムは凍って動かなかった
硬く凍った雪の上をざくざくと歩いて
ブランコへ向かった
並んで静かにぶら下がる鎖の先に一枚の板っきれ
そいつに並んで座ってブランコを漕いだ
真上には満月
「これは月旅行やな」
と言ったら
「それは大げさやろ」
と娘が言った
しばらくどっちが高く漕げるか競争していたけど
ふたりともブランコ酔いをしてしまったので
家に帰ることにした
街灯のLEDが目に痛い
いつの間にか街から電球が消えた
一面雪の田んぼの畦道を歩きながら
街中の灯りが今夜、今
いっせいに消えてしまったら
月旅行に旅立てるかもしれない
とほんとに思った
Posted by 女神ちゃん at
◆2014年01月16日23:56
│スキマ