スキマ

深夜です
信号待ちの車の中
思い切り気分よく振りまで付けて歌っていたら
すぐそこの立派なホテルからイケメンが出てきて目が合いました
とても立派なホテルでした
とてもイケメンでした
でも途中で終わるわけにはいきませんでした
彼と見つめあったまま歌いました
彼のために歌いました
でも彼はわたしを振って横断歩道の向こうのコンビニへ消えていきました
彼の背中に向けて歌いました
ズッコケ男道～


先日
ライブにやってきた岡林くんが、
リハ終わって近くの蕎麦屋に行ったというので後を追いました
蕎麦屋の暖簾をくぐると
数人のお客さんが
そこに見慣れた後姿を見つけ
早いなもう蕎麦きとるやんか
と思い、蕎麦をすする岡林くんの肩に手を置いて
「お疲れさん！」
と顔を覗きこむと
見慣れたはずの岡林くんの顔がどこか微妙に違う
顔変わったなー
ともっかい覗き込んでみる
あれ、こんな顔やったかなー
「・・・たぶん人違いと思いますよ」
よかったです
蕎麦注文する前で
そのまま空腹のままライブに臨みました


夕方
近所のスーパーへ娘と買い物に
刺身のコーナーで
「久しぶりに刺身でもいいなぁ、なにがいい？あーたこいいな、イカはお母さん食べれんけどな」
とひとしきりしゃべって横にいる娘の顔見たら、
そこに立っていたのはすこし小柄な中年のおっさんでした


職場で外回りに出るとき
荷物を車に積み込んでいたら
ドクターが玄関でタバコを吸い始めました
猛烈な暑さでした
じりじりと焼けつくような照り付けるような日差しでした
ドクターを見上げるわたしは手をかざし言いました
「眩しいです」
わたしを見下ろしながらドクターは言いました
「ダレが？？」
ドクターの頭には数本の髪が神のように乗っているのでした

外回りから帰ると
またドクターがタバコを吸っていました
「おかえり」
と荷物を降ろすわたしに夕陽を背負ったドクターは言いました
わたしは再び手をかざしてしまいました
「ただいま、髪さま」