Xさん

お仕事のお話 第2弾
よそのとある総合病院に勤めていた私は、呼吸器病棟に勤務していた
40床あり呼吸器疾患の方に限らず、下の階のICUがいっぱいだとHCU設備のある私の病棟へ患者さんが移されては来るし、ベッドの調整で整形の患者さんや糖尿の患者さんなどさまざまな疾患の方で常に満床(詳しくは→わたくしのお仕事記事Ⅰ、→わたくしのお仕事記事Ⅱ

この日わたしは夕方4時半から深夜までの、準夜勤
「おはよーございまぁす」
おやつの入ったコンビニの袋をシュワシュワさせてご出勤
ナースステーションの奥のちょっとした休憩室に荷物を置いてまず換気扇の下で一服(この頃は喫煙者でありました)
そこへ4才上で看護婦としては先輩、けど同期入社のkちゃんが
「おもしろいのが入ってきたで」
とニヤニヤ鼻の穴をふくらましながらやってきた
「楽しみにしとけよ~」
kちゃんはスキップしながら点滴に行ってしまった

「申し送り始めますがいいですか?」
チームリーダーに声をかけられ、タバコを消す
ここからわたしの一日ははじまる

「305号〇〇さん、退院決まりました。〇日10時エント(退院)予定です。退院指導、エント処方済みです。
   〇〇さん、昨夜から熱発、本日胸部X-Pの結果、抗生剤変更になってます。本日16時KT38.3℃です。」
など入院患者さんの病態を細かに申し送る(送られる)

「最後、302号に新患さん入りました。柴田Xさん、男性46才。」

「Xさん???」

思わず口をはさんでしまった
ブログ上実名を上げられないのでなく、申し送りのナースはほんとうに
「Xさん」と言ったのである

「そう、Xさん。柴田Xさん。」

なんでも、病院近くの国道1号線沿いの「柴田町」の高架下のダンボールハウスにお住まいで、今朝仲間が訪ねたら意識を失って倒れていたとのこと  お仲間は慌てて近くの家に駆け込んで救急車にて搬送、入院となったらしい
ご近所(お仲間)さんもご本人の名前は知らないらしく、当の本人は身分を証明するもの何一つ持たずで、意識不明
なので「柴田Xさん」
こちら側が勝手に命名したのである

このXさん、検査の結果、肺炎、糖尿病を患ってるらしく、極度の低栄養もみられた
点滴の成果あって午後には意識回復したものの、今ひとつはっきりしない
名前を尋ねても「わからない」と言うらしい
ただ年は46才 というらしい
意識が戻ったから「ありがとうございました」と言って帰ろうとしたらしい
でもとても温和な表情で、いい人そうな感じらしい

らしい

なにがなんだかわけがわからんらしい

「それ、やばないっすか?」
と言うと、
「受け入れちゃったからね~。でも病状落ち着いたら退院じゃない?本人帰りたがってるし。一応区の福祉担当者には連絡入ってるから」


Xさん

どんなひと?
国1のガード下で拾われちゃった(ごめんちゃい)Xさん

申し送りも終わってさぁて巡回、Xさんはややこしそうやから最後にしよっと と思って立ち上がると
「すみません」
とナースステーションの入り口にスーツの男性が

「こちらに柴田Xさん入院してらっしゃいますか?」

Xさん、もうすでにXさん知名度上がり中

「ご面会ですか?」
たいていの面会人はそのまま病室へ行かれるのだが、なんかこの人  違う

「こういうものです」

黒い手帳をペロン
ほんとにこうやって出すんやぁ 警察手帳

「刑事さんですか?」
制服ではなかったので聞いてみた

「南署の〇〇です。柴田さんにご面会を」



柴田さん  なにしたの??


のっけから波乱の予感の準夜スタートであった





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