病院シリーズですか

ひさびさに仕事ネタいってみます

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20代、わたしはよそのそこそこ大きな病院でお仕事してました
高校卒業してから都(?)へ出て、働きながら資格を取るために午前中は病院、午後は学校、実習、また夜は病院 
合間にレポートに追われ、家には寝るだけに帰っていたような生活でした
といっても当時はバブル最盛期
クラスメート達は寝る時間を惜しみ、前髪をくるんくるんに巻き上げ、ぼでこん着て羽根のセンス持ってお立ち台でヒューヒューやってたようです
わたしは幼い頃からそういう表舞台に立つ人間じゃなかったので
地味にライブに通ったり、家でじーっとヘッドホンで大好きな音楽聞いたり、自転車で川へ行ってぼーとしたり、友だちのいる居酒屋行ったり、ときどき仲間で海いって遊んだり ってやってました

そんな地味で老けたわたしですので、病院の患者さんのおじさんおばさん、おじいさんおばあさんには受けが大変良かったです
夕方学校から直で病院へ入るため、途中のコンビニでパンとジュースを買ってロッカーで着替えながらパンをかじります
パンが買えればいいけれど、バスが遅れたりするとそのまま仕事に入って夜10時過ぎまで食べ物お預けです

その病院は看護学生は特別に白衣がピンクでした
今思えばいやらしいですね
いやらしい病院
病院側は看護学生に何を期待していたんでしょうか
期待に応えられなくてすいません

なので、患者さんや看護婦さんからはまとめて
「ピンクちゃん」
と呼ばれてました
いったいどういう期待をされてたんでしょうか
でもことごとく期待を裏切りすいません

で、入ってしばらくは他の学生同様、ピンクちゃんと呼ばれていたわたしですが
最初に配属された外来である患者さんに出会います

その人は篠原さんといって当時50代くらいだったかなぁ
ケンケンをのんびりさせたような感じの人で、とても穏やかでおっとりしててゆっくり喋るやさしいおじさんでした

ケンケンと呼ぶにはなんか違うし、まぁ篠原さんと呼べばいいんですけど
わたしは自分の中であだ名をつけて人を覚える癖があるので
篠原さんを熊さん、と名づけました

さて熊さんですが、彼は肝臓が悪いので仕事帰りに点滴に通います
いつも汚れた作業着に首から手ぬぐいをかけて、時にはねじりはちまきのままやってきます


「ただいま~」
と処置室に入ってきます
いつもとってもだるそうで、ボロ雑巾のようにくちゃくちゃに見えます

点滴のベットにバタンと倒れこみます
ベテランの看護婦の佐藤さんが世間話をしながら上手に点滴します
しばらくすると熊さんはいびきをかいて寝てしまいます

佐藤さんは当時40代くらいでしょうか
ハスキーな声で宝塚の男役のような顔つき、髪を後ろに一つ束ね、うすい唇に真っ赤な口紅をひき、
きびきびと仕事します 
ひじょうにあっさりとした人で、ときどき大口を開けて豪快に笑います



わたしは総合処置室で勤務でしたが学生のわたしができる仕事は限られています
もちろん点滴を射すことはできないですが抜針はさせてもらってました
他には受付業務、薬液や医療材料の補充、医療機器の掃除や管理など
て、こやって書くといっぱしな感じですがほんとに雑用でした


いつもように熊さんがいびきをたてはじめます
熊さんのぽっこりしたお腹がゆっくり上下に揺れています

そーっと近寄って毛布をお腹までかけてあげます


熊さんが来る時間帯はたいてい空いている時間なので、いびきかき放題でも文句を言う人はあまりいません
たまに迷惑そうな顔して熊さんのほうを見る人がいるので、そういうときはそっと近寄って熊さんをつっつきます
起きないけどいびきは一瞬止まります
それがおもしろく、用もないのにつっついたりしてはしていました

そんな熊さんはいつも爆睡してしまうので点滴が終わっても気付かず寝ています



「熊さん、点滴終わりましたよ」

あるとき心の中でだけ呼んでいた愛称で篠原さんを呼んでしまいました

ぽかんとしている熊さん

「わ、すいません!」

謝るわたし


「ははっはー」

熊さんは大声で笑いだしました


「そうか、熊さんか。うちのかみさんもおれのこと熊さんて呼ぶんだよ。そっか熊さんか」


「すんません」


「じゃぁ、あなたの名前はなんていうの?ピンクちゃん。」


「たんぼです」


「・・・・・じゃぁ、たんぽぽちゃんだ」



こうしてわたしのあだ名は決定したのでした
それからも熊さんは仕事帰りにくちゃくちゃになってやってきて、
相変わらず豪快にいびきをかいて一寝入りしたあと、だまってパンとパックの牛乳を差し出すのでした

それを黙ってみているベテラン看護婦の佐藤さんが

「カルテ庫いっといで」

と言ってくれます

パンと牛乳持って処置室の隣のカルテ庫でむしゃむしゃ

同期入社の事務のFくんがネクタイ締めて仕事しています

「わ またさぼりか」

「うるさい  腹減って仕事ならん」



牛乳で流し込んでまた処置室へ

「たんぽぽちゃん、これお願い!」

佐藤さんが張りのある声で呼んでくれます






熊さんはたぶん 看護の道に足を踏み入れて一番最初に仲良くなった患者さんでした

佐藤さんははじめてかっちょいいー!としびれた看護婦さんです


わたしはそんな人たちに囲まれて看護婦の勉強だけでなく、いろんな経験させてもらいました

ほんとにいい病院だったなーとつくづく思います


看護学生の白衣がなぜピンクでなくてはならなかったのは今となっては不明ですが、
当時期待に応えられなかった分、こうして今世間様に恩返しをさせていただいてるつもりです

なんてうそです
うそいいました


ずーっと期待はずれの人ですんません


でも

ずーっと看護婦やってます


辞めてもやっぱり看護婦やってます








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この記事へのコメント
スキマさま

おはようございます( ^-^ *)オハツ♪

ってかおひさ~です。。。
覚えておいででしょうか(@_@;)

ひえ~!同じギョーカイだったとは(@_@;)
…っていってもあちきは「薬売り」ですが…

いつか「MusicNight」で出演の際には
お越しくださいね~(^◇^)ノ
Posted by sato-sin at 2011年08月02日 00:46
お久しぶりです
覚えてますよ~ お元気ですか?暑いですね
病院ネタは全部実話です(事実を曲げない程度に若干色つけてます)
でも時効ネタから書いてるつもりです

高山でも歌うんですか?
いい歌いっぱい歌ってくださいね!☆
Posted by 女神ちゃん女神ちゃん at 2011年08月03日 18:59
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