お馬さん

久々に病院の昔話いたしますです

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看護婦であるわたしは20代、よそのそこそこ大きな病院に勤めていました
高校卒業と同時に家を出て、就職と就学二足のわらじをはいていました
看護学生として午前仕事、午後学校、夜仕事 そして時々実習 て感じで
高校でたばっかなのでまだ10代です
最初の所属は外来関係だったので、とにかく患者さんの顔を覚えるのに力を入れてみました
斉藤さん、鈴木さん、前田さん
こういうありふれたおもしろくない名前だとぜんぜん覚える気がいたしません
しかも顔もなんも特徴もなく普通だったりすると、
その人はわたしの中で勝手に脱落していきます

遠山さん、荒巻さん、蟹江さん
こんな名前だとうきうきしてきます

遠山の金さん、新巻鮭、蟹江きん、ぎん

ていうか蟹江妹は病院の患者さんでした
(まじで。ぎんさん直筆の句持ってます。イラスト入り)

名前を覚えるのに苦労はしたくないので(もっと大事なことを覚えなきゃならんのです!!)
強烈な名前、もしくはキャラの人から覚えていきます
しゃれこうべみたいな顔だったらガイコツ、いっつもオロナミンC飲んでたらオロナミンC、
中元(ナカモト)さんだったらお中元、パンチパーマだったらパンチ、で、さらに顔が丸かったらアンパンチ
みたいな感じ
その術を外来で得とくしました
それは今でも役にたっています
(あなたもあだ名つけられているかもしれません ひひひ)

で、それは免許とって病棟いってからもそんな感じで自分の中でだけ
患者さんの愛称をつけてよんでいました

ここまで長かったけど、一応これからのお話の振りのつもりです
今日はお馬さんという中西さんの、あ、逆だった
中西さんというお馬さんのような顔の人のお話です

中西さん、68歳
病名はもうなんだか忘れてしまいました
なぜかこの人の病気のことほとんどていうかぜんぜんてくらい覚えてないんです
ただこの人の顔だけはいやにはっきりと思い出せるのに
肺に水が溜まって、それを機器を使って抜いて、を繰り返してました
あんまり予後の良くない病気だったんじゃないかな と思います

このお馬さん、いつから仲良くなったんかな
なぜかおうちにも遊びに行ったりしてました
その経緯すら覚えてません
だったら書くなよということですか?

でもリクエストあったので
て、自分で書くと言ったんですね
すんません

お馬さんのような顔してて、この中西さんとってもいい人で
どういいのかっていうと
おいしい蟹が届いたといってはおうちに呼んでくれたり、
おいしいさくらんぼが届いたといっては持ってきてくれたり、
つまりそういう人です

愚痴や酒にも付き合ってくれます

ここまで書いてきて疑問や誤解を解かなければいけないような気になってきました
彼氏ではありません
そういう利害関係だけの間柄でもありません
だってお馬さんだもの

近所のおっちゃん
ていうか親戚のおっちゃん て感じかな


なんかね、地域全体がそんな感じの町なんです
病院の裏には大きい川が流れていていっつもドブくさくて
川の向こうは工場がだーっと並んでいて
煙突がいっぱいあって その先からはもくもくと黒い煙がいつも上がっていて
とうぜん公害喘息の町で
病院前の中学校は荒れてて窓ガラスがいつも割れてて
駅の周りは風俗店がひしめいて
ヤクザが幅をきかせてる
でもそんな労働者の町で、そこに住んでる人々はとってもおもしろくたくましく
あったかくてやさしい
人の痛みを自分の痛みのように感じる人たち

そんな町のおっちゃん
お馬さん


ある日、呼吸器病棟の大部屋、お馬さんのいる大部屋にベット調整のため整形の患者さんが移ってきました
名前を太田さんとしましょう
ベット調整のためなので、3、4日でまた整形に戻るらしく、しかもチームも違うので
ほとんど関わりなく過ぎていくはずでした

お馬さんは病状も落ち着き、経過観察してあと2、3日で退院かな というときでした

「退院したらお祝いにカラオケ行くか」

そんな話を同期のKちゃんとお馬さんと3人でやっていたところ
ナースコールです

「どうされましたか?」

「お願いします」

「いま伺いまーす」

整形の太田さんです
訪室すると、ベットの上に薬を並べています

「どれを昼飯のあとに飲むのかわからんようになった」



詰め所へ戻りカルテを見てみます
太田さん、68歳
お馬さんと同じ年か
なんか太田さんの方が老けてるな
ていうかなんか謎の人やな
職業は大工 とあります

それであんなに真っ黒なんか
なぜか病室のなかでもサングラスをかけています
でも目が悪いわけではなさそうです
頭にはタオルをねじ巻いてド派手なTシャツを着ています

変な人

でもどうせ3、4日で移っていくんだからあだ名をつけるほどでもありません


病室へ戻り薬の説明をします

「これとこれがお昼、この3つが朝食後です」

「・・・」


聞いてるのか聞いてないのかそわそわしてて落ち着きません


「またわからなくなったら聞いてくださいね」



変な人



詰め所に戻って相手チームの主任さんに一応報告しておきます
この相手チームの主任さんは当時流行ったソバージュヘアで、胸のポッケに小さな鈴をつけていて、
どこにいてもチリチリ鳴ってすぐわかるし、何しろ高い声でキャンキャンと話す人なので
チワワ と名づけてました
今夜はこのチワワと深夜入りです






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